サグラダ・ファミリア(聖家族) (新潮文庫 な 41-1)
サグラダ・ファミリア(聖家族) (新潮文庫 な 41-1) / 感想・レビュー
優希
極上の恋愛小説であり、家族小説でした。かつての恋人に再会したことで燃える情熱が体を突き刺します。孤独なピアニスト・響子とシングルマザーの透子は昔も今も変わらぬ想いを抱ける同士だったように思います。突然の透子の死により忘れ形見となった桐人、突如現れた謎の青年。ゲイの照とビアンの響子は桐人を守るため義家族になって繋がるのが苦しかったです。それぞれが愛した男の忘れ形見だから。だからこそ3人は聖家族になれたのでしょう。血の繋がりだけが家族でないという新たな家族の形を浮き彫りにするのが鮮やかでした。
2016/01/28
じいじ
この小説の根底を流れているのは、人生におけるり伴侶、一言でいえば「家族」なのだろう。途中、主人公二人が対峙する箇所がある。ピアノには感情移入できるけど、生きている赤ん坊には無理で「壊してしまいそうで怖い」とピアニストの女は言う。頭で理解はできるものの、納得はし難い。この人の小説はいろいろの場面で、鋭い刃物で胸倉をぐさりと抉られる恐怖感がある。そこが癖になって、他の作品にも手を出したくなってしまう。
2021/12/12
紅香@とにかく積読減らします💦
私達は薄氷の上でダンスをしているようなものだった。薄氷が割れ透子は去っていき私だけが水の中に沈んだ。。神々の楽器、ハンブルク・スタインウェイ。紡ぎ出される情熱的な楽曲の数々。スペインの風を纏う。その葛藤や愛は異性愛と変わらない。禁忌の籠が取り払われたら真実の愛はどこに向かって羽ばたくのだろう。。サグラダ・ファミリア。未完の教会。恋人が作ろうとした未来の計画。この物語に相応しい力強い明日を感じさせるタイトルが粋。ロルカの詩集。沢山のクラシック。素敵なものが一杯詰まっている大人な女性の部屋にドキドキする。
2014/12/31
風眠
愛した恋人の忘れ形見の桐人。この小さな子どもを守るため、愛さんがため、これから創り上げていく未来への決意。それはサグラダ・ファミリアという未完の教会のように、いつとも知れぬ完成の未来を見はるかす新しい家族の形。ビアンのピアニスト・響子、死んだ恋人の透子、行方知れずの桐人の父親、その恋人だったゲイの照。愛した恋人の血を引く桐人を育てるため、透子と照は擬似夫婦となる。アルベニス、グラナドス、ファリャなどのスペイン物のピアノ曲、そしてロルカの詩。吹き抜けていく風のように、それぞれの生き方への自由を象徴していた。
2015/02/06
さきん
LGBTに焦点を当てた内容であった。主人公も女性のピアニストながら、ジャーナリストの女性を愛し、愛した女性を失った後に、遺児を通した交流を通して、成長していく。流れでゲイとレズと遺児の血のつながりもない家族という話は、頑張って考えたなと思った。著者のピアノに対する造詣が深い。他の作品も読んでみたいと思った。
2017/02/15
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