徴産制 (新潮文庫)
徴産制 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
小説の時間は21世紀末に置かれており、その意味では近未来SFの形式をとってはいるのだが、内実はSFではなく、仮構世界である。スミダインフルエンザなる流行病によって、若い女性の大半が死に絶え、政府は徴兵制ならぬ「徴産制」を施行する。すなわち、18歳以上31歳未満の男はすべからく女性に性転換させることで、子どもを産ませようとしたのである。一見したところは荒唐無稽な設定に見えるが、実は作者の目論見は、世の男性たちに女性であることの抑圧を小説形式をとることで疑似体験させる(知らしめる)ことにあった。女性たちは⇒
2023/07/18
rico
これはとんでもない問題作かも。21世紀末、伝染病で多くの若い女性が犠牲になり、替わりに若い男性が性転換手術で2年間女性になる「産役」を義務づけられた日本。最初は女の身体にとまどう男たちに、「そーだ、そーだ、女の苦労わかったか!」と盛り上がってたのだが、男目線で率直にリアルに語られる理不尽な現実、差別、蹂躙される心と体・・・。グサグサくる。身につまされすぎる。さらに、今まさに先送りしてる問題の行き着く先をきっちり描く容赦なさ。それでも、産役を経た若者のしなやかな変化は、明日への希望かもしれない。
2022/06/18
fwhd8325
もう少し軽い内容かと思っていましたが、意外に重たい内容でした。ここ最近の社会では男だとか女だとか性別の境目を「意識的」になくそうとしています。大事なのは性別による差別にあるものと思っています。この物語はインフルエンザによって若い女性がたくさん亡くなったことに端を発していますが、裏を返せば男も思い知れ何でしょうね。
2022/04/06
ネギっ子gen
【産役は陰でギョクサイって呼ばれてんだよ。キンタマ無くして女になるって意味の『玉砕』と、玉のような子どもを産んでカネが入って大喜びって意味の『玉祭』】2092年。新型インフルエンザの蔓延により10代から20代女性の85%が喪われた日本では、深刻な人口問題を解決するため、国民投票により「社会福祉保障等の持続可能社会実現に向けた性転換の義務化による出生率上昇促進案」、通称『徴産制』の施行が可決された。このSF設定に仮託して、現代ジェンダーの課題をアイロニカルに描く佳品。センス・オブ・ジェンダー賞大賞を受賞。⇒
2023/05/21
さおり
2093年、疫病で若い女性ばかりが死んだことから、国は男性が性転換の上、出産することを奨励する制度をつくる。その名も「徴産制」。章ごとにかわる計5人の主人公はみな「産役男」だけど、その背景も様々なら物語の展開も様々。設定の勝利というか、もうこの設定で一生おもしろいお話書けちゃうんじゃないの?とか思いました。おもしろい、だけじゃない深いことを考えながら読める本だとも思うんだけど、私は何も考えずに楽しんだ。お気に入りさんたちの感想を読んでみたい、そんな本です。
2022/05/03
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