機巧のイヴ (新潮文庫)
機巧のイヴ (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
直接のということではないまでも、物語の発想の核となっているのは、からくり儀右衛門こと田中久重の「万年自鳴鐘」と数々のからくり、及びフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは…』だろう。そして、これに捻りを加えたのが"闘蟋"である。テーマは明解で、"心" あるいは"愛"の実態は何なのかということ。エンターテインメント小説としてはとっても良くできている。ことに表題作は。5つの連作短篇からなるが、表題作と「箱の中のヘラクレス」までは水準が維持されるが、3作目以降は活劇化してゆき、テーマの収斂度は弱い。
2019/07/29
あも
どうしようもなく好きなやつ!和風スチームパンク!江戸時代を元にしたパラレルワールド、天府幕府の精煉方手伝である天才機巧師の釘宮久蔵と外見も機能も美女にしか見えないロボット伊武。この2人をキーキャラクターとした短編を連ねることで、靄のかかった世界観が美しく広がっていく。ただでさえ希少な時代SFでありながら、内容も充実。男女の愛憎あり、幕府と朝廷の争いありと各短編一つ一つも趣が異なり読み進める程にどっぷりとのめり込む。心とは?魂の座はどこにあるのか?というロボットものの永遠の命題を心に残す読後感も素晴らしい。
2019/03/16
おかむー
ラノベ寄りなサイバーパンク時代劇と思って読んでみたら、江戸時代的架空世界を舞台にした予想外の読み応えの良作でしたよ。『よくできました』。江戸時代のようでちょっと違うパラレルワールドな世界観と、SF的オーバーテクノロジーというよりはからくりによる機功人形という設定がしっくりと噛み合って違和感のなく読み進められるのが好感触です。個人的には話が大きくなる後半よりは、もの悲しい雰囲気の連作短編になっている前半二篇のほうが好きかな。表題になっている割には出しゃばらない伊武という存在もよい感じ。
2018/03/18
ちょろこ
意外性を味わえた一冊。SF×時代もの、一番苦手な組み合わせかと思いきや…読みやすく面白い世界観。第一話目の意外な展開にいきなりしてやられた感いっぱい。そして伊武(イヴ)の言葉ひとつひとつから感じる悲哀、せつなさに意外な心を感じ、魂とはどこからやってくるのか…ふと読み手を立ち止まらせるこれまた意外な哲学的なるものを盛り込ませながら、徐々に明かされていく秘密。甚内のめぐりめぐらす「魂」への思いには思わず感嘆の吐息、伊武の可愛らしさには微笑みの吐息。これは想像以上に奥深い作品。
2018/12/17
★Masako★
★★★★乾さん初読み♪幕府と女系の天帝家が権力を振るう江戸時代を思わせる世界。その世界で翻弄されながら生きる天才的機巧師(ロボット工学者)・釘宮久蔵と美しい女の姿をした機巧人形・伊武を中心とした時代伝奇&SF連作短編集。予想以上に面白かった!一つ一つの話のレベルが高く、特に一話目の「機巧のイヴ」は驚きの結末とミステリー感が秀逸!伊武誕生の謎等、読み進めるにつれ話のスケールも大きくなっていく。伊武が顔を赤らめたり怒ったり泣いたりする姿はまさに「人」。魂はロボットにも宿るのか?残された謎もあり続編が楽しみだ♡
2018/12/14
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