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薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本 (新潮文庫)

作家
小川洋子
出版社
新潮社
発売日
1997-12-24
ISBN
9784101215211
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薬指の標本 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

表題作『薬指の標本』は、そのタイトルからして、何やら背徳的な匂いが漂う。そして、小説は、やはり期待(?)に違わず、その細部に至るまでが、淫靡な美意識に満ちていた。そもそも、ここでは物語の全体が、隠喩として機能しており、それはまさしく「標本」そのものを指し示しているのにほかならない。語り手である「わたし」は、しだいに標本技術師の弟子丸のフェティッシュに捉えられてゆくが、やがて2人のフェティッシュが共振した時、読者である私たちは、小さな戦慄に震えるのである。『六角形の小部屋』は、安倍公房風のシュールな味わい。

2012/07/29

遥かなる想い

小川洋子の本は本当に独特の世界を作り上げてくれる。「標本室」で働いているという世界は閉塞感があって不気味である。しかし、私は 意味もなく好きなのである。

2010/05/13

さてさて

”永遠の愛”を象徴する薬指にダメージを受けた『わたし』。”永遠の愛”に『標本』を捧げるような意味合いが見えてくるその展開。乾き切った世界の中に、血という水分を思い起こさせる欠けた『薬指』というその対比。「薬指の標本」、それは乾ききった死の世界をイメージさせる標本室の中で、静かに育まれていく歪んだ愛の世界を見る物語。そんな物語に流れる現実と非現実の曖昧模糊とした空気感、それは独特な浮遊感のある読書の時間を与えてくれました。はっきりしない結末に、浮遊感がいつまでも私の中に残り続ける、とても印象深い作品でした。

2021/01/16

酔拳

「薬指の標本」「六角形の小部屋」の短編2編が収録されています。「薬指の標本」はとても怖く、フェチズムを強く感じる小説です。実際にこんな標本室があったならばと思うととても、怖いです。「六角形の小部屋」は、主人公の女性の内面の表現の仕方がとても秀悦で、その箇所は何度読んでも、感心させられるだろう。 この短編集は、何度読んでも心動かされると思う。 再読、決定です。

2018/06/18

HIRO1970

⭐️⭐️⭐️小川さんはまだ2冊目。「博士の愛した数式」を読んでかなり面白かったので二匹目のドジョウ狙いで読んでみました。この人はエロさが皆無(薄過ぎる)なのが唯一の難点だと思いましたが、トワイライトゾーンとでも言うべき、日常の中の隠れた別次元の位相世界へいざなうちょっとルナティックな大人のホラー調な短編が二つ。薄い本なのでサラッと読めますが短かすぎて電流が流れる前に終わってしまいました。う〜〜ん・・・もう一冊は読まないと相性が良いのか悪いのか良く判りませんでした。取り敢えずもう一冊チャレンジしてみます。

2016/05/31

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