博士の本棚 (新潮文庫)
博士の本棚 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
小川洋子さんが読んだ本の紹介を中心としたショート・エッセイ集。さすがに読者としても、精妙にして緻密な読みを開陳する。自分が読んだ本でさえ、眼を開かれることばかり。特に感心したのが村上春樹の一連の小説に、彼女は常に死の影を見ていること。また、未読の本はいずれもすぐにも読みたくなるほどに魅力を伝えるのが巧みだ。さらには、ところどころで彼女の創作の秘密を語っていたりもする。例えば「小説を書く時、舞台となる町の地図を作り、家の間取りを描くところからはじめる」といった風に。何よりも小説の空間を大切にしていたのだ。
2015/03/07
ehirano1
長らく積読していてゴメンナサイ、と本書に謝りたいです。著者のやや赤裸々過ぎる点が良い意味でのアクセントになりながら実に軽快なエッセイで、ページを捲る手が止まりませんでした。特に、P.オースターや村上春樹の著作が本書によって、「彼等はそういうことを言っていたんだなぁ」と溜息が出るくらい理解できたのはホントに僥倖でした。 第二弾はないのでしょうか?
2020/03/15
はたっぴ
タイトルを見て素通りできず、積読にもしておけず、ムズムズしながら頁を捲ったが、小川さんの言葉の魔術にかかり、どの作品も次々と読んでみたくなる。著者の本に対する情熱の迸りを捉えたくて、Kindleでハイライトをしながら読んでいたら、ラインを引きすぎて真っ黒になる頁もあり、表現方法を学ぶ生徒のような気分で読了。小川さんのようにいつまでも初々しい気持ちで、トキメキながら読書を楽しみたいものだ。早速、ポール・オースターと、村上さんの『中国行きのスロウ・ボート』、武田百合子さんの『富士日記』を読んでみよう。
2016/06/02
コットン
小川さんが本や自身を語るエッセイ集。紹介本では『中国行きのスロウ・ボート』(以前に読んでいるが再読したくなる語り口!)、『西瓜糖の日々』(すごい小説と紹介され気になる)。自身を語る:家の前に美味しそうな茄子が落ちていて小雨が降り出したとき茄子の下のアスファルトだけは乾いたままだったのが「短編小説のようだ」と小川さんがつぶやく感性がすごい。そして、「小食と言いながらも、食後のおやつは欠かしません。」という可愛い面も…。
2014/07/13
hiro
小川さんの本を読むのは10冊目。コロナウイルス疲れで読書への意欲もなかなか湧かないが、以前『洋子さんの本棚』を読んで、『アンネの日記』と『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』を読もうと思ったように、今回もいい本との出会いを期待して積読本になっていたこの本を読んだ。登場する本は小説だけでなく、エッセ―、ノンフィクション、漫画など幅広く、その中で『手塚治虫悲恋短編集』が気になったので、是非読んでみたい。また小川さんのエッセ―からは、タイガース、ラブラドール、アンネの日記への強い愛を今回も感じた。
2020/04/02
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