幸田文の箪笥の引き出し (新潮文庫 あ 44-1)
幸田文の箪笥の引き出し (新潮文庫 あ 44-1) / 感想・レビュー
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
母、幸田文とその着物についてのエッセイ。娘の婚礼の赤い振袖や、自分用の菜の花が咲き乱れた黒留袖。遺された紬の生地で染めた鈍色の着物。うまくいかなかった縁談に作った真っ白い振袖。幸田文はこの振袖を着てあの世に旅立った。とはいえ、こんな母親の子供だったら、ちょっと疲れるだろうなあ。、
2018/07/02
更夜
青木玉さんは幸田文の一人娘で幸田露伴の孫。祖父や母の思い出を主に書かれていますが、祖父がいたころの思い出が『小石川の家』この随筆は主に母、幸田文が残した着物の写真をふんだんにとりいれ、着物にこだわって独特の鋭いセンスを持っていた母の姿と母一人、娘一人で暮らす様子を豊かな語彙でもって文章にしています。何故、玉さんは小説家にならなかったのだろう、と思うくらい玉さんの書く言葉は美しく、毅然としています。決して裕福ではなかったけれど、厳格にそして、愛情たっぷりに育った姿が美しい。文さんの着物姿が目に浮かびます。
2020/01/03
HH2020
◎ 母の弔いのため、コロナが蔓延する東京へと出発する日に図書館で慌ただしく旅のお供として選んだ。書名から幸田文の遺品にまつわるエッセーだろうと想像した。その予想はぴたりと当たったが、それよりなにより玉さんの品位を感じさせる文章力に脱帽した。幸田文の文章も大好きだが娘もどうして私の好みに合う。着物についての知識に欠けている自分が悔しいが、それでも生地や色や柄を組み合わせて無限に広がる優雅な世界を十分に味わった。幸田文がまだ若く元気あふれるころから死を迎える前まで、自分の母の姿と重ね合わせながら静かに読んだ。
2021/04/10
豆ふうせん
母・幸田文が遺した着物に込められたさまざまな想いを、娘・玉さんの目で辿る。普段は着る機会のない着物。文さんの小説『きもの』で活字を追いながら、想像の中で完結させていた色合いや柄、着た時の佇まいが、豊富に散りばめられた写真をながめることで、ずいぶんはっきりと色づいた。幼い文さんはある日、継母が文さんを里子に出すようにと、父に進言しているのを聞いてしまう(「すがれ菜の花」)。この話が不憫で、たまらなかった。
2021/02/28
ち〜
着物が好きなので、とても面白かったです。流行がめまぐるしく変わる現在のファッションよりも、着物のほうがセンスが問われると思います。色の名前についても勉強したいと思いました。
2014/04/27
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