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輪舞曲 (新潮文庫 あ 95-2)

輪舞曲 (新潮文庫 あ 95-2)

輪舞曲 (新潮文庫 あ 95-2)

作家
朝井まかて
出版社
新潮社
発売日
2023-03-29
ISBN
9784101216324
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輪舞曲 (新潮文庫 あ 95-2) / 感想・レビュー

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ふじさん

大正時代のモダンと情熱に生きた松井須磨子の後継者・伊澤蘭奢の物語。「40歳になったら死ぬの。」の口癖の通り早逝した新劇女優・伊澤蘭奢の生涯を彼女を取り巻いた4人の男、愛人兼パトロンの内藤、蘭奢が人妻だった頃からの恋人・徳川無声、帝大の文学青年・福田、生き別れの息子・佐喜雄の視点から描いた作品。初めて知る伊澤蘭奢は、大正時代に、夫と離婚し、実の息子と別れ、多くの人々の誹謗中傷を浴びながらも、女優という多難な道を突き進んだ一人の女性としての生き様が見事に描かれている。いつもの朝井まどかの作品とは一味違う作品。

2023/11/16

となりのトウシロウ

大正時代の新劇女優、伊澤蘭奢を、彼女を取り巻く4人の男性視点で描いた作品。舞台を目指して妻と母の役割から降り、島根から再び東京に出てきた蘭奢。女優の地位は低く活動写真は無声の時代、舞台の仕事だけでは生きていくのも難しい。そんな時代に趣くまま奔放に生きる女性、周りの男たちを巻き込む力のあったのかも。あまり共感は出来ないけど、この時代に凄い女性がいたんだな。話の展開は視点や年代がコロコロと変わるので頭は混乱気味でした。

2023/11/12

みこ

己に正直に生きた女優、伊澤蘭奢の生涯を彼女を取り巻いた4人の男とともに描く。女性は家でおとなしくしているものという価値観に反発するかのように女優の道を目指した彼女は演じることを通じて古い価値観に縛られた自分以外の何かになりたかったのだろう。彼女自身よりも周辺人物を掘り下げる描写により大正時代の価値観の変動を描いているのだが、そのぶん本人の描写が駆け足な感はある。巻末のあとがきを読むと、地元で評判の芳しくないことに配慮したとのこと。

2023/05/17

ミエル

伊沢蘭奢の逞しく慎ましい生涯、パトロンである愛人、長年の腐れ縁の弁士、火遊び相手の帝大生、婚家の実家に置いてきた息子、四人の男が彼女の死後に遺稿集を作る。歴史や血縁の濃い故郷津和野から東京へ、逃げるように飛び込んだ演劇界は女優不足の真っ只中、三十路近い女にも需要があった事は幸運だっただろうけど、努力はもちろん、それ以上に肝の座り方と覚悟が求められた事が充分理解できた。バイト感覚の活動写真では本名を、舞台に立つ時にだけ「伊沢蘭奢」の名前を使う誇りが心に響く。為事(しごと)を背負う女の潔さと決意がかっこいい。

2024/06/09

エドワード

大正時代。松井須磨子亡き後、新劇界で喝采を浴びた伊澤蘭奢の四十年の生涯。津和野の紙屋に嫁いだ娘が、小さな村を飛び出して東京で女優となる。最初、架空の人物かと思いきや、実在の女優だ。パトロンで雑誌主宰の内藤民治、最初の恋人でご存知・活動弁士の徳川夢声、東京帝国大学生・福田清人、そして実の息子の伊藤佐喜雄の四人の視点から、輪舞曲の如く回る、蘭奢の華麗にして寂しい日々が綴られる。背景に描かれる大正の世相、美文調の文章の巧みさ。佐喜雄の手紙、四人で語り合う終幕の余韻、まかてさんの「後の記」、胸に迫るものがある。

2023/06/01

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