暴雪圏 (新潮文庫)
暴雪圏 (新潮文庫) / 感想・レビュー
W-G
寒い夜に、地元北海道の暴雪地域を題材にしたミステリを。バッチリはまって、趣のある楽しい読書時間だった。序盤から、徐々に荒れ出す天候の中、各人物を断続的に描写していく構成は、北海道に住んだ経験のある読者にはスリル抜群。各々の事情が道東方面の片田舎らしいスケールであるのも妙にリアル。しかし、ペンションに全員集結してからがややまったり。そりゃ外部と断絶している設定なのだから、どうやってもそうなるだろうが、主人公の川久保巡査が完全に蚊帳の外。ようやく関係者と接触したと思ったら、拳銃使って一瞬で決着して呆然。
2021/01/15
おしゃべりメガネ
およそ8年ぶりに文庫にて再読です。やはり面白い作品というのは年月を経ても、結構覚えているもんですね。佐々木譲先生の作品は今野敏先生と同じくらいのレベルで読みやすい作風だと思います。ボリュームはなかなかの分厚さですが、展開もスムーズで描写もシンプルなのでストレスを感じません。北海道は道東エリアにはお馴染み?の爆弾低気圧の描写が、見事にリアルで圧巻です。警察小説とあらゆる人物が絡み合うサスペンスの融合は、素晴らしいの一言に尽きます。主人公がいたって普通の駐在員だという設定も地味ながら物語をひきしめています。
2017/01/13
SJW
北海道東部を爆弾低気圧による強烈な吹雪が襲い、志茂別(大樹町がモデル)は暴雪に閉ざされてしまう。暴力団の組長宅で強盗殺人を起こした犯人、不倫のカップル、横領犯人、家族の崩壊から逃げてきた娘などいわく付きの人達が避難のために街の郊外のペンションに集結する。駐在の川久保巡査部長が強盗殺人犯がいる閉ざされた志茂別を助けようとする長編警察小説。道東の自然の厳しさがひしひしと伝わってきて、川久保の冷静な判断と正義感に感銘して応援してしまった。
2020/07/26
財布にジャック
「制服捜査」からだいぶ経っているので、川久保巡査部長って誰?な状態でしたが、シリーズ第2弾だったのですね。佐々木さんの警察小説は、もう文句なく面白いわけで、更に今回は自然災害パニックものというドキドキする内容で、文字通り一気読みでした。そして、あまりに夢中になるあまり通勤電車を一駅乗り越して、会社に遅れそうになるという失態付きの読了です。ただひとつ残念なのは、題名にもあるように凄い雪の日が舞台なのですが、小説の中のような凄い雪は見たことが無いので、頭の中に思い描くことが出来なかったことです。
2011/12/29
ばりぼー
3月末の彼岸の頃、北海道東部を猛烈な暴風雪が襲った一夜を描く群像劇。強盗殺人犯アキラこと佐藤、不倫関係の清算を願う人妻坂口明美、出会い系サイトで女漁りを続ける菅原、人生を悲観して会社の金を持ち逃げした西田、義父に犯されることに耐えられず家出した高校生美幸などなど、これでもかというくらい同時に事件が起こり、ペンションに吹き寄せられていく様は壮観。「志茂別は犯罪の少ないところ」って、どの口が言う(笑)。川久保巡査部長の「保安官」ぶりは、やや現実離れしているものの、引き込まれる魅力に満ちています。続編希望。
2016/03/21
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