獅子の城塞 (新潮文庫)
獅子の城塞 (新潮文庫) / 感想・レビュー
カムイ
佐々木譲の作品は派手さないが一途なキャラクターに魅了される主人公の戸波次郎左の人生の物語、築城する上で石積は大事な部分である。史実を元に作者の技巧を屈した描写は西洋の城郭造りは臨場感たっぷりでした。ただ、傭兵の小三郎と勘四郎は不必要だったかもしれません。長編でしたが歴史の埋もれた人々をはばたせてくたのは人物を興味を持って読書が楽しくなる。ヤン、ヨウースデンにはすこし興味が湧いた。
2024/03/30
鐵太郎
16世紀の、日本の戦国時代末期に石積みで名高い穴太衆の棟梁の息子戸波次郎左は、織田信長の命により西欧の技術を習得して安土城を上回る城を築くため、いわゆる天正遣欧少年使節と共にヨーロッパへ旅します。この本は、彼が激動の西欧の時代の中で、ひとりの技術者としてどう生きたかの物語。ネーデルラント独立戦争を背景に物語は進み、歴史上名高いブレダ攻城戦がフィナーレとなります。この間、早くて5年のつもりで旅立った日本の青年は、欧州で何を行ったのか。これは、緻密に組み立てられた見事な技術職人の歴史小説。いいね。
2020/05/13
YONDA
天下城の続編となる今作。エウロパの石積み修行に出た次郎左。西洋の技術に触れ、自分の物にしていく過程は見習いから熟練の職人へと成長して行く男の一代記。自分がこの時代に生きていたとして、船で数年かかる異国に行き、生きていこうと決心できるだろうか。次郎左の「職人」としての熱い血が羨ましくもある。「いい仕事をした。」、この一言を聞き、次郎左は職人としての生を全うできた。
2017/04/25
月をみるもの
佐々木譲が愛してやまない「歴史の影にいるテクノクラート」(←もちろんたんなる市井の人というわけではなく、当代きっての超一流の技術をもってるわけだが)。そのひとつの典型がここに描かれている。石積職人がローマに行ったという記録は残ってないが、歴史裏話として「アウグスチーノ」と入れ替えるという小技を使う。ここに思わず二マッとしてしまうのは自分だけではないだろう。ぎりぎりまで記録との整合性を詰めることで、フィクションの部分も「ほんとにこうだったのではないか」という説得力が出るのだ。歴史小説かくあるべし。
2023/06/03
TheWho
戦国時代末期、西洋式築城法を学ぶ為に欧州に渡った石積職人の主人公が、ルネッサンス真っ盛りのイタリアや独立戦争中のオランダで数奇な運命を綴った大冒険物語。著者初読みで、裏面のあらすじで興味を持った一冊。建設の詳細な描写は、山本兼一 のテクノクラート物語の様であり、また築城技術の変遷や15世紀の欧州の歴史、城塞攻防戦は、塩野七生の「ロードス島攻防記」を彷彿とされた。久しぶり自分の好きな世界が満載の物語に出逢った様でもあった面白い一冊です。
2017/03/16
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