命 (新潮文庫)
命 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『命』4部作の第1巻。私小説まがいのリアリズム小説に見えるが、柳美里自身はこれを「物語」と位置付けている。けだし、彼女にとっては、ぜひとも書かねばならなかった物語なのである。作品の構造は一見したところでは、単純明快―すなわち新たに生まれ、日々その生を育んでいくものと、一方では急速に衰微し、死にゆくものとが拮抗して描かれる。しかし、その生と死とがそれぞれ内包するものは、存外にも複雑である。ことに東の死は。そもそも、本書は彼の死を悼む晩歌として書かれているのであるから。そこにあるのは単純な哀しみでないことは⇒
2023/05/19
メタボン
☆☆☆☆ 作家はここまで自分の人生をさらけ出せるものなのか。生まれ来る命と死にゆく命に、真っ向から対峙した本当に熱い小説だった。命の誕生の場面は柳美里にしか書けない、壮絶なリアリティ。この壮絶なリアリティを、しっかりと受け止める覚悟を持って、第二幕へ突入する。
2020/03/02
秋 眉雄
「なにやってるの!耳にどこどこ水が入ってる!」柳美里はぶきっちょだ。生き方を含めて器用に立ち回ることが出来そうにない。でも、だからこそ書けるのだろう。不幸というのは状態で、幸福とは瞬間のなかに存在するってホントそうだよなあと思った。リリーフランキーの解説が秀逸。流石。
2016/01/24
やまねっと
この本は小説なのか随筆なのかノンフィクションなのか上手く分類できることが出来なかったのだが、ふと私小説という言葉が浮かんだ時にふに落ちた。 消えゆく命と生まれてくる命が交差したところに混乱が生じていたが、東さんは幸せだったと思う。僕はそう思う。 ただ子供は不幸ではないと思う。愛情を持って育ててほしい。切に願う。 あと、解説のリリーフランキーの文章が今まで読んだリリーフランキーの文章の中で一番感動した。 このシリーズは四部作らしいので、全部読んでみたいと思いました。 この家族に幸あらんことを。
2020/09/11
ゆみ
柳美里と言う女性はとても感情の起伏が激しい人なんだなと言う印象を感じた。不倫の果ての妊娠と言うことで尚更不安定な感じがしたのかもしれない。しかし、この不倫相手は本当にどうしようも無い男なのに、いつまでも拘ってる作者が理解できなかった。恋ってやはり当事者にしか分からない部分があるんだと思う。そしてもう一つの命、大切な人の死に向き合う目を背けないと言うのは、自分を一回り大きく成長させると私は思う。
2017/02/10
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