石に泳ぐ魚 (新潮文庫 ゆ 8-10)
石に泳ぐ魚 (新潮文庫 ゆ 8-10) / 感想・レビュー
びす男
憎むことのない人は、惚れ込むこともない。話の筋を捉えがたいのは、主人公自身の「色」が薄いからか■優しい人はいる、居心地の良い人もいる。でも、離れてゆく彼らを引き留められない。周囲の人間関係がせわしなく流れ変わってゆくなか、彼女はひとり、中州に佇んでいる。生々しい妊娠中絶の痛覚だけが、彼女は生きていると伝える■「私は狂人ではない。気が狂うことのできる人をいつも羨ましく思っている」。巻き込まれてもひとり、抱かれてもひとり。そんな女は、劇的で面白い物語を生まない。読むにつれ、孤独とやるせなさが心に沈殿してゆく。
2018/01/19
はるを
🌟🌟🌟🌟☆。大好きな柳美里の幻のデビュー作。私小説?と思うほど他の作家が真似の出来ないとてもデビュー作とは思えないほど柳美里らしい濃厚な内容で一度読んだだけでは把握しきれない。でも、物語として纏まらないカンジがリアリティ溢れて凄く好感が持てる。情緒不安で自分を大切にしない。短気でケンカっぱやくて情に脆くて気難しい非常にめんどくさい主人公、秀香。「大丈夫か?この人。」とヒヤヒヤしながら読んだ。猫は結局どうなったんだろう。柿の木の男って結局、実在したのだろうか。また機会があったら再読したい。
2022/01/30
秋 眉雄
『それは小説というより、火炎瓶に似ていた。感じやすいものほど、深い火傷を負わされるような。しかし、作者がその焰のなかにいる以上、人は何を云えるだろうか。(福田和也の解説より)』小説なんだからその中身について色々と考えるのも当たり前なんですが、この本の場合、表現の不自由についても考えてみるべき一冊なんでしょう。何をどのように書くべきか。書けるのか。どこまで書いても行き着くのは、書く人と書かれる人の関係性以外に決着の付けどころは無いように思えるのは何故か。
2020/11/29
kera1019
行き場のない感情を一つ一つ丁寧に拾い上げて物暗い世界に言葉を満たしていく…痛みや匂いまで感じられる表現には嘆称しますが、もう少し広がりが欲しかったような気もします。
2013/10/25
CCC
読めば気が滅入る事間違いなしの一冊。負が渦巻いてる。
2015/10/18
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