8月の果て〈下〉 (新潮文庫)
8月の果て〈下〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
下巻では、結構な分量にわたって従軍慰安婦が語られる。博多の軍服工場で働いて、釜山高女に通うことを夢見ていた金英姫は騙されて武漢の慰安所に連れてこられる。彼女はまだ13歳だった。それから光復までの2年間は、まさに地獄の日々だった。光復後、彼女はかろうじて大連にたどり着き、引き上げ船で釜山に帰ることができた。船が釜山を目前にした時、彼女は海に身を投げた。彼女があの地獄の中で、たった一つ守り通せたのは自分の本名、金英姫だけだった。彼女が自ら命を捨てたのは、慰安所でではなく、解放されてからである。そして、そこに⇒
2020/08/17
Masakazu Fujino
とても素晴らしく美しい小説。在日朝鮮人(韓国人)の柳美里さんでなければ書けなかった小説であり、日本小説界の宝です。とても演劇的な小説です。
2024/01/18
k&j
初めてちゃんと読んだ柳美里さん作品。最初に手を出すにはちょっと強すぎるものを選んでしまったかもしれない。まず長い、日本語と朝鮮語が地の文とルビとで交互に入れ替わったりする文体は決して読みやすくもない、何よりも内容が重すぎる・・。上巻はまだ朝鮮の美しい情景描写などもあって救われるのだけど、下巻は従軍慰安婦や保導連盟事件のエグい描写が続いて読むのが辛かった。ラストでそこまでの悲惨さが昇華されるかのように終わったことが一応救いだった。最後まで読んで良かった。
2021/09/07
さんつきくん
1940年の東京オリンピックは中止に。オリンピック出場をも狙えた主人公・李雨哲は失意の淵に。年齢的に次のオリンピックには出られないが、その思いを弟の雨根に託すことに。雨根もまたオリンピックを狙える選手だった。軍靴の音が響き、終戦。韓国は植民地支配から脱するが、やがて南北がいがみ合う朝鮮戦争へと突き進む。左翼活動をしていた雨根は殺されてしまう。主人公・雨哲よりも周りの人物達の描写が印象に残る作品でした。騙されて従軍慰安婦になった密陽の少女の話しは、読んでて辛かった。そして、雨哲は日本へ渡る。そして、晩年へ。
2018/03/01
kera1019
再読。あまりにも壮絶な物語と力強く訴えかけて来る文章に読んでいる自分がどこにいるか分からなくなるくらい引き込まれます。正直、読み易い本だと思いませんし、歴史的な事とか色々考えさせられる作品ではありますが読後、読書の満足感があるのは小説家としての柳さんの魅力だと再認識しました。
2018/01/30
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