一瞬の夏(上) (新潮文庫)
一瞬の夏(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
ノンフィクションライター(おそらく沢木さん本人)である私の、かつての取材対象者であり古い友人のようなカシアス内藤。一度はリングを離れた彼が復帰するという。その彼を追ってボクシングの世界を魅せてくれる今作。かつて具志堅さんファンだったわたしにも、ちょっと懐かしさのする作品だった。「私」がアメリカ本土を旅するシーンもいい。ちょっとだけ『深夜特急』を思わせるような。一気に下巻へ。
2024/08/30
遥かなる想い
沢木耕太郎の作品を初めて読んだ記念の本。「カシアス内藤」という東洋タイトルを目指すボクサーと同化させながら、はまることができる。 「カシアス」という名の不幸を取り上げた醒めた目も記憶に残っている。
2010/05/08
ふう
平成25年32刷の文庫本。表紙がちがいますが、出版社は同じ。 新聞小説をきっかけにこの作家が好きになり、「ボクシング」という今まで全く知らなかった世界におもしろさを感じて読みました。深夜特急の旅から帰国して、また次に賭けるものを求めたルポライターの、夢を追う喜びと苦悩が伝わってきます。新聞小説の「春に散る」というタイトルもなんだか寂しい結末を予測してしまうのですが、「一瞬の夏」というタイトルが、夢を追う男たちの、夢の終わりを感じさせて、先へ進むのが不安です。
2016/02/11
夜長月🌙@新潮部
東洋ミドル級チャンピオン・カシアス内藤、カムバックのノンフィクションです。沢木氏は書き手でもありますが個人的にカシアスと深く交流がありました。デビュー以来24戦無敗でチャンピオンに昇り詰めてから急下降。ボクシングを離れて4年も経ってカムバックはありえません。ボクシングはそこまで甘くない。それでも戦う理由はやり残したものがあるという想いでしょう。燃え尽きるまで戦いたい。カムバックへの道筋は長く遠く曲がりくねっていました。
2022/11/05
姉勤
1978年。戻るべきリングに立つため、バンテージを巻く二人の『カシアス』。かつて世界チャンプを嘱望された「カシアス内藤」と”モハメド・アリ”として知られる「カシアス・クレイ」。ひとりは4年のブランクからのカンバックを掛けて、もう一人は、三度目の世界チャンピオンへの座に。著者の目を通した「カシアス」像と、時代の空気、景色。異質なものが混ざって起こる化学反応。そして同質への帰属意識。黒人とのハーフである内藤が生きる日本と、アリの試合を観に著者が渉ったアメリカ。二人の心と行動が、二重螺旋の様にドラマをあざなう。
2015/04/07
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