一瞬の夏(下) (新潮文庫)
一瞬の夏(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
恥ずかしながら上巻レビューでみなさんに教えていただくまで、これがほぼ実話だと知らずに読んでいた。上下巻とも中弛み感を感じていたが、筆者は事実をできるだけはしょらずに記録として残そう、と決めていたのだろう。ボクシングにかける男たちの熱量、結びつき、そして挫折、壮大なドラマを読み切った思いだ。
2024/09/03
ふう
同じ夢を見ているはずの、しかもたくさんの場数を踏んできたはずの男たちに亀裂が生じ始めたとき、当然なことだが、プロスポーツにはスポーツ以外のものもいろいろと絡まっているのだと、改めてその厳しさを感じました。それでも、自分の納得のできる「いつか」を求めて挑み続け、一瞬に倒れて…。生きていくということは、勝者になるよりも敗者になることの方が多いのだけど、その寂しさを受け入れてまた歩き出すのは勇気のいることです。 「ハッピーエンド、かな。」 「そうだと…いいけど。」 そうだといいけど、答えはわかりません。
2016/02/11
姉勤
事実は小説より奇なり。と言うが、小説ならばカタルシスやサクセス・ストーリーに設える最高の材料が揃っているこの舞台を、こう料理する事は無いだろう。万億とある平凡な事実の中から砂金を攫う様に見つけた奇貨を、勿体無いと物語りのよすがとしてしまう。その拾われる事の無い、平凡な結末にもこれほどのドラマがあり、積み重ねる生きた時間がある。グローブを壁に掛けて聞くテンカウントは、次の人生の始まりでもある。
2015/04/09
よこしま
カシアスになれなかった男。◆下巻は重かったです。まさか沢木さん自身がプロモーター役を買って出るとは思いもせず。日本を代表する名トレーナー・エディ・タウンゼントと内藤との3人が上巻ではあれほど結束が強かったのに、呆気なく崩れるとは。2人が感じ取れた、内藤の「何かに責任転嫁をする」という一面が最後の最後に出てしまった様な。◆カシアスという名はモハメド・アリの改宗する前の名。彼のようにブランク明けや苦しい展開を打開できず。◆現在、息子である内藤律樹選手が、父子揃って日本王者になりました。カシアスを超えてほしい。
2015/08/11
James Hayashi
第1回新田次郎文学賞受賞。東洋のタイトルを獲得したボクサーが再起を誓いトレーニングに励む。タイトル戦に向けての緊張感が高まっていくのかと思いきや、職場、環境、相手陣の不手際など難問が山積みし不安感が高まっていく。それも強さみなぎる若いボクサーではなく、最高の肉体からは程遠い衰えを見せ始めた身体。このボクサーを身近に見つめた著者が内藤と体験した復帰戦をノンフィクションとしたもの。輝かしいものでなく、憂いを強く感じた作品。現在カシアス内藤の息子、内藤律樹が東洋太平洋スーパーライト級王者として活躍中。
2018/12/01
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