【旧版】深夜特急5 ートルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)
【旧版】深夜特急5 ートルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
とうとうアジアとヨーロッパの境い目へ。ある日トルコの街中で、この車に乗れば5日のうちにロンドンに着き、そこから東京には一週間のうちに戻れるのだ、と気づき(実際にはそうしなかったが)愕然とする筆者。偶然の賜物のように招待されたギリシャの誕生パーティでは、一宿の恩義まで受けて「これが旅のクライマックスかもな」としみじみとする筆者。どれもこれも愛おしい。トルコもギリシャも、子どもの頃からなぜか憧れて、一度も機会がなかった国々。ご一緒に堪能させていただいた。舞台は最終巻へ。
2020/11/22
ヴェネツィア
いよいよ第3便。旅の終末が近づいてきて、なにかしら淋しさが漂う。その一方で、この巻は途中がメロドラマ仕立てにもなっている。アンカラで画家の愛人を訪ねて行くシーンがそれだ。「私は…ローマを…愛していたわ」―なんともやるせなく切なく、それはまさしく往年のヨーロッパの名画を見ているかのようだ。そして、後段では沢木が中学生の時に読んだという小田実の『何でも見てやろう』への言及があり、彼もまたペロポネソス半島に向かう。「キリストのまねび」ならぬ「小田のまねび」だ。たしかに、あの本でのハイライトはその地であった。
2013/01/31
やすらぎ
寝苦しい夜が明けた。アジアが終わろうとしている。多様な文化が混ざり合う国、トルコへ。山の向こうに雲が見える。中東に雲はなかった。…何かがおかしい。寒い。身に沁みるほどに寒い。失うものなしに進むことはできないのか。…旅の交差点イスタンブールの優しさは救いだった。…旅が終わったしまうではないか。景色は綺麗だが物足りないではないか。…自分が変わってしまったのか。旅の目的は何だったのか。人それぞれの最上のものを私に与えてくれた。それなのに旅をどう終えるんだ。ギリシャ最後の愛ととともに、地中海の上で青に包まれて…。
2021/05/05
zero1
旅は人生に似ている。イランからトルコ、西アジアから欧州へ入った沢木。宿に帰っても誰もいない寒さに掴まるか?【禅とは何か?】との問いに彼は、”Being on the road.”と答える。使者としての役割を果たし、旅が終盤に入っていることを実感する。オリンピアの古代競技場で走り体力の無さを痛感。作中に登場する「何でも見てやろう」(小田実)を沢木は中学の時に読んだという。小田が個人旅行の先駆者なら、沢木も後の若者に多大な影響をもたらした(後述)。次は最終の6巻。【ワレ到着セリ】の電報をロンドンから打てるか?
2019/11/02
absinthe
バックパッカーの聖書第五弾。著者ご本人も、ややお疲れの様子。第四便あたりから旅に新鮮な驚きを感じられなくなっている気がするのだが、そんな描写が顕著になってきた。確かにヨーロッパに近づくと東南アジアやインドほどのインパクトはないのか。どれでもジプシーとの出会いやイスタンブールの熊さんのエピソードはモンド映画のような楽しみはいっぱい。手紙を託されての不思議な出会い。彼の旅も残すところあと一巻か…
2021/02/10
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