【旧版】深夜特急6 ー南ヨーロッパ・ロンドン (新潮文庫)
【旧版】深夜特急6 ー南ヨーロッパ・ロンドン (新潮文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
終わってしまった。この巻でわたしが足跡をかすったのは、パリのエッフェル塔。そうそう、みんな登らないんだよ。脚元で写真撮るだけで安心する観光地の代表。バスの中での現地の方たちとの交流、思わず自身の体験と照らし合わせてしまった。これだけたくさんの街を見て、人と触れ合って、「わかっていることは、わからないということだけ」と言い切る謙虚さに頭が下がる。この冒険譚の人気は、そんな彼の性格によるのだろう。すべての若者に、そして「体力的にも社会的にも、もうこんな旅は無理」という「かつての」若者たちにお勧めしたい。
2020/11/23
ヴェネツィア
「なんと、粋だなあ」―再読にもかかわらず、思わず声が漏れてしまう。長い長い旅のエンディングとして、これ以上は考えられないような結びの1文だ。「こうして私は日本に帰ってきましたとさ。おしまい」―などとならないところがこの紀行の優れたところ。そう、構成が実に周到なのだ。オープニングは暑いインドの倦怠からだった。そして今、物語の終りは冬のロンドンで。結果的には季節感も最高だったようだ。それにしても、沢木は旅の終わらせ方もそうだが、作品としての結びにも、大いに頭を悩ませたことだろう。『深夜特急』―良かった!
2013/02/01
やすらぎ
ローマ行きのバスはない!列車で行け!…どこかで聞いたやり取りで始まる最終話。ピエタ像に感動したが、平凡な観光客の一人ではないか。二十六歳にして私はこのままでいいのか。目覚めなければ。まだ五百ドルあるし太陽は輝いている。海は青く蒼く碧いが納得できない。…私は透明人間なのか。まだだ。フランスを通りすぎよう。…晩秋の南ヨーロッパは意外と心地がよかった。終わる場所を探さなければ…。暗闇の中、果ての岬に向けて歩く。身悶えするほど瞬く星の光が降り注いでいる。波の音も聞こえてくる。旅を終わりにしようか…。ワレ到着セ・。
2021/05/06
zero1
【わかっていることは、わからないということだけ】。旅はいつか終わる。でも旅そのものが人生なら、死ぬまで終わらない。ゴールのロンドンを前に旅を終わらせたくないという想いがよぎる沢木。船での帰国も考える。遠回りしてイタリアからスペイン、ポルトガルのサグレスへと足を延ばす。正直、後半は前に進むという旅の瑞々しさが失われていて主に内面が描かれている。ロンドンから電報は打てた?結果は読んだ人だけが分かる。巻末の対談は井上陽水。シリーズ序盤、マカオでの経験が忘れられないのか、博打に必勝法はあるのか?という話に。
2019/11/04
absinthe
バックパッカーの聖書第六弾。とうとう最終巻だが終わりは意外。文明国に入ってしまうとモンド映画風醍醐味は減ってしまうがそこは沢木さん。観光客に交じって名所を巡る沢木さんはやっぱり想像しにくい。一癖も二癖もある、独自の流儀で旅は続く。さっさとロンドンへ、という重いといつまでも旅を終わらせたくない気持ちが入り混じった心情が良く判る。スペインからどうせここまで来たのだからとポルトガルへ向かってしまう様子がそれを良く表している。
2021/03/02
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