暗殺者ロレンザッチョ (新潮文庫 ふ 20-10)
暗殺者ロレンザッチョ (新潮文庫 ふ 20-10) / 感想・レビュー
眠る山猫屋
飄々としたロレンザッチョは魅力的だが、ちょっと鼻につくところも。三人の宮廷淑女の間を綱渡りする様は優雅でさえあるが、その根底はアナーキスト。複雑な時代・政局・政争に紙面を割かれていたせいで、物語が少し楽しめなかった中盤が残念。
2016/06/13
あ げ こ
フィレンツェよりフランス宮廷へと逃げ延びた美貌の暗殺者に近づくのは、優美な装いの下に、苛烈さとしたたかな本性を隠した、三人の女性。自らの欲望を完遂する為に覗かせる、残酷な一面が、醜悪であると同時に凛々しく、艶美にさえ感じられる。英雄を夢見て手を染めた悪事。だが今や単なる殺人者に過ぎない自らを嘲笑するロレンザッチョ。彼の心を動かしたのは、自らに価値を見出せぬ者への共鳴。共通の思いを持つ者に刻み込む自らの人生。暗殺者から英雄のものへと変わって行く物語。勝利者となった女性の成長、直向きな決意が好ましい。
2014/02/28
Roti
フランスでは有名でもあまり日本では知られてないロレンザッチョ。中世の欧州列国の王家の内紛、外交上の取引きに体を張って存在感を示し、自分とは何かを追い求めた男の話。長くは生きれなかった時代だから若くして諦観に苛まれるのは仕方ないのかもしれないが、権力に取りつかれ、すがるしかなかった人々の悲哀はその裏返しなのだろう。
2014/02/27
HoneyBear
カトリーヌ・ド・メディシスについては同著者の「ノストラダムスと王妃」が秀逸だった。この小説は別の視点から仏王フランソワ1世治世下の王妃・愛妾たちの命懸けの駆け引きと権謀術数が、官能的な匂いを混ぜつつ語られる。主人公の告白を通じて16世紀初頭の神聖ローマ皇帝カール5世の台頭とイタリア半島の混乱の様相も描くが、台詞回しを中心に物語が進行するので少し難しい。感性が鋭くウィットに富んだ台詞回しは流石だが。個人的にはもう少し絵巻・劇画的なハプスブルグの宝剣、ブルボンの封印、逆光のメディチなどのほうが面白かった。
2014/07/25
うたまる
フランス宮廷版大奥、いや、こちらこそ女の権謀術数の本家本元か。三者三様に打算を働かすが、権力者の考え一つで人生を翻弄される、などというのは悲劇でもあり喜劇でもある。そこら辺がよく書けていたのは流石。もう一つの柱が、ロレンツィーノの暗殺に至る心情と顛末。こちらはちょっと子供っぽい理屈が多い。ヤンキーが悪さをする言い訳のよう。しかし、それに気付き自らをも突き放したニヒリズムに陥るのは分かる……「笑い過ぎて、胸が苦しかった。これほど熱心に、我も忘れて何を笑っているのだろう。決まっている。自分をである」
2012/07/19
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