東亰異聞 (新潮文庫)
東亰異聞 (新潮文庫) / 感想・レビュー
Tetchy
作者があえて明治時代の「東京」を語るのではなく、現在の歴史とは違ったパラレルワールドである「東亰」を設定したのには、これら魑魅魍魎の跋扈する異世界を描きたかったのが狙いだと思ったが、出てくる人物名に板垣退助だの井伊直弼だの中江兆民だの歴史上の人物が、此の世界において成した同じ事件の数々の当事者として出てくるのにしっくり来なかった。が、この作者やっぱり解っていた。最後の終章に至り、物語はガラリと反転する。この反転でもう1つの図式が判明するのだから、単純にミステリとかファンタジーとかで判断しないで欲しいなぁ。
2009/12/24
kishikan
明治という時代は歴史資料もかなり残っているのに、どこか異空間のイメージがある。科学や文明も、江戸期とは比べようもない程発展しているはずなのに、謎めいたものが多い。この小説も、明治29年の帝都東京に対比した「東亰」というパラレルワールドを舞台に、明治期の急激な進歩の故に歪んでしまった(時代遅れになってしまった)生活様式の矛盾を鋭くえぐる、壮大なミステリになっている。事件の謎の構成も複雑で巧妙だが、そこに魑魅魍魎が跋扈する怪奇談があり、そしてなにより夜の闇の深さ、桜の美しさを散りばめた文章に感動しきり!
2012/06/11
takaC
Wonderful!いや、Fabulous!これとても好き。almost 1 decadeも積んでたことを大いに悔やめ、オレ!
2014/04/05
ゴンゾウ@新潮部
文明開化で一気に西洋化が進む首都東亰。その華やかな帝都に魑魅魍魎達の仕業と思われる不可解な事件が夜な夜な起こる。やがては名門公爵家のお家騒動にたどり着く。ホームズばりの近代的な推理で鮮やかに事件は解決かと思ったが、終章でまた魑魅魍魎の異界の世界に引き戻される。このなんとも言えない霧雨のような異界の迷宮。早く抜け出したい。
2019/02/08
nobby
思っていたのと全く違う作風や展開に戸惑いながら読んだ一冊。各章導入部の黒衣と人形との語り合いになかなか入り込めず…それでも火炎魔人・闇御前・人魂売りなど魑魅魍魎の奇々怪々溢れ描かれ出す妖しき様はさすが小野作品ならでは。なるほど、それで“東京”でなくて“東亰”なのか。あたかも怪奇小説なのかと思いきや、その襲撃や殺人を意外にも人為的トリックや時代背景ふまえた動機に結び付けて解き明かしていく。ある人物の執念・怨念に行き着き複雑な気持ちでいた所に、最後明かされるその正体や訪れた事態にゾクっとさせられる。
2017/08/19
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