屍鬼(五) (新潮文庫)
屍鬼(五) (新潮文庫) / 感想・レビュー
Tetchy
最初に意識していた小野不由美版『呪われた町』などという思いは最後には吹き飛んでしまった。この濃密度は本家を遥かに上回る。単純に長いというわけではない。本書が孕むテーマやドラマがとにかく濃く、実際どれほどの感想を書いても全く以て書き足らない思いばかりだ。ゆめゆめ油断なさるな。21世紀の、平成を経て令和になった世にもまだ怪異は潜んでいる。それを信じる大人になってほしい。それがために物語はあるのだから。まさに入魂の大著と呼ぶに相応しい傑作だ。そしてこんな物語が読める自分は日本人でよかったと心底思うのである。
2019/04/18
nobby
まさに人間の逆襲の巻。ようやく一致団結した村人達による屍鬼の殺戮の徹底振りに人間のエゴが現れ生々しい。息絶えさすには心臓破裂の為に杭を打つ、もしくは首を刈るしかないという事実が一層あおる。一方で日中は全く動けず眠る様を狩られる弱点はどうにもならない。「ただ食事をするだけ」に人間を襲い、増殖すればするほど生存が破綻する屍鬼の悲哀がたまらない。とにかく人が持つ怖さというものを様々な見地から圧倒的に見せつけられた。
2015/10/23
takaC
うむ、そう結びましたか… 単純に善vs悪ではないと…日本人以外には難しい背景&観念かもね。
2008/12/14
はらぺこ
終了。正直、複雑な気分やなぁ。4巻までの辰巳の嫌がらせが無ければ完全に屍鬼側に肩入れしてたと思う。あんなに世話になってた加奈美に対する元子の行為は酷いわ、気の毒に思うけど・・・。大川親子は似たもの親子やなぁ・・・。全巻通しての感想、いつ寝たらええか分からんぐらい引き込まれた。
2010/06/29
nabe
小野不由美ホラーの最高峰。重厚さでは他の追随を許さない、ジャンルに抵抗がなければ手放しで薦めたい作品だ。地獄絵図の最終巻。正に現代の魔女狩り。異物を排斥する人間の冷酷さをまざまざと見せ付けられる。しかも中世のそれとは違い冤罪などは皆無。磔にして火あぶりにするまでもなく、まるで陽の光の下で生きられない事こそが悪だと断罪されるかのように次々と太陽の業火に焼き尽くされるかつての村人。彼らに何の罪があろうか。ただ屍鬼として生まれ変わってしまっただけなのに。世界に認められなかった存在。神に見放された存在。(続く)
2015/02/28
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