用心棒日月抄 (新潮文庫)
用心棒日月抄 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
青江又八郎を主人公とした、シリーズ第1作。藩内の陰謀に巻き込まれたために脱藩を余儀なくされ、江戸で、はからずも用心棒暮らしをする又八郎を主軸とした物語。しかし、本書は同時に「忠臣蔵外伝」という、もう一つの顔を持つ。大石以下の浅野家浪士たちとの接点をしだいに深めながら、又八郎の、そして義士たちの物語は同時に進行してゆく。討ち入りの夜の描写はさりげなくなされるが、それだけに想いは深い。エンディングはハッピーエンドなのだが、細谷からの手紙―「吉蔵ともども、来るべき再会を祈り上げ候」―は、意味深長だ。
2012/07/07
yoshida
青江又八郎は筆頭家老大富丹後の藩主毒殺の密謀を知る。許嫁である由亀の父、平沼に密謀を打ち明けるも、平沼は大富派であり青江はやむ無く彼を斬り江戸に出奔。用心棒稼業で糊口をしのぎつつ大富の送る刺客と対決する。並行して「忠臣蔵」事件も流れ、青江は赤穂浪士、吉良家ともに結びつく。連作短編の形を取りながら、江戸の庶民の暮らしや悲哀、歓びを描く。藤沢周平氏の作品として、やはり安定した面白さを持つ。最終章で青江は藩に戻り録も戻る。青江を待っていた祖母と許嫁の由亀にほっとする。残り3作。事件は続く。読むのが楽しみな作品。
2015/12/11
kinkin
予想以上に面白く読むことが出来た。彼の市井ものや武家ものとは違う味付けがなんとも心地よい。時代劇のハードボイルドといってもいいと思う。主人公の青江又八郎、口入屋の吉蔵、又八郎と同じく口入屋の世話になる細谷源太夫、特に又八郎と源太夫のコンビはまさに映画のヒーローのような動きと緩急つけた会話が読ませてくれる。そして「忠臣蔵」の話を並行して進めながら絡ませていく著者の腕が冴えわたる名人芸、。この続編も楽しみだ。
2016/05/05
ちょこまーぶる
以前このジャンルの本を読んだ時は、苦手意識を持ってしまったが、今回は非常に読みやすくて苦手意識を少し克服できたような気がする。用心棒又八郎の請け負う仕事の内容や生き方・考え方からは26歳の青年とは思えないから驚きである。又八郎が今の時代にタイムスリップしたら・・・って想像したら、刀を振り回してばかりいるのではないだろうか。それはそれで、一冊の本が書けそうな感じもするが。
2012/05/13
ゴンゾウ@新潮部
藤沢周平氏は男を描くのがとても巧い。国許の陰謀に巻き込まれ脱藩し江戸で用心棒に成り下がってしまう青江又八郎。生活の為に始めた稼業ではあるが、武士としての一線を決して踏み外さない。そこが私の心を惹きつけてやまない。息つく暇のない死闘の数々。国許から送られる刺客との闘い、江戸庶民との交わり、そして美人が色を添えている。更に赤穂浪士との不思議なつながりが添えられる。面白くないはずがない。
2015/12/27
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