神隠し (新潮文庫)
神隠し (新潮文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
【海坂藩城下町 第8回読書の集い「冬」】イベント参加第一作目は、大好きな市井ものメインの短編集で。いやぁいいなぁ。誰もがみんな、満たされない思いを抱えて生きている。幸せにもうちょっとで手が届きそうになると…。にしても、藤沢周平氏ってこんな官能的な作品を書いてらしたんだな。当時はリーマンがいちばんのお得意さまだったろうから、彼らに捧ぐおとぎ話(ハーレクインロマンス)かな(笑)
2022/12/26
yoshida
藤沢周平氏の江戸を舞台にした短編が11編収録。消せない過去や、人生の転機、逃れられない過去、人情の機微が巧みに紡がれます。表題作や「夜の雷雨」など、比較的、哀切の強い作品が多かった印象です。その中でも「桃の木の下で」での志穂と亥八郎の希望を感じるラスト、「小鶴」の光穂と吉左衛門夫婦のやり取りに心が暖かくなりました。夫婦の関係はそれぞれ色々で考えさせられますね。安定して読める名作。
2015/09/13
kinkin
冒頭の「拐かし」や「昔の仲間」最後の展開が面白い・「昔の仲間」ならドラマ化しても面白そう「疫病神」はやっぱりか・・・という展開。「鬼」タイトルにいくつもの意味が込められている。武家物の「小鶴」がよかった。仲の悪い夫婦のところに迷い込んだひとりの娘は何者なのか、そしてその後の成り行きは、静かな武家屋敷のすんだ空気と迷い込んできた娘の清楚な姿が伝わってきて好感が持てた。久々の藤沢作品を楽しませてもらいました。
2022/12/04
ケンイチミズバ
どの作品も筆の終わりに笑みがこぼれそうになったり、う~んと唸り声が出るくらい絶妙でした。大衆小説の色も濃く敷居の高さもありません。追われる男をかくまった百姓娘がラストに鬼に変身するくだりは素晴らしい。侍ながら一揆を先導した男に百姓の味方だと憧れを抱いた娘は鬼瓦のような父親の血を引いた自分の容姿を思い悩み孤独で男を諦めてもいた。男は優しく、彼をかくまう行為で自分は人生が開けたと思ったのも一時、追い詰められ家を出ていく男の口から出た言葉は娘の想いを見事に打ち砕く。ラストの娘の行為と結末はシェイクスピアかと。
2022/09/08
ふじさん
「拐し」は、娘の誘拐の顛末を綴った短編で、意外な結末がユーモア仕立てになっていて面白い。表題作「神隠し」は商家の妻女の失踪事件だが、ストーリが凝っていて最後まで予断を許さない展開で、思いがけない結末を迎える。捕物小説だが、ぐうたらな十手持ちの巳之助の存在がいい。「昔の仲間」の宇兵衛と幸太、「疫病神」の鹿十、「鬼」のサチと新三郎などの登場人物の際立った個性が巧み。「小鶴」「暗い渦」「夜の雷雨」等は、どれも市井に生きる人々の感情の機微を余情溢れるタッチで描いた傑作だ。
2021/11/23
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