ノーライフキング (新潮文庫 い 39-1)
ノーライフキング (新潮文庫 い 39-1) / 感想・レビュー
アナーキー靴下
再読。この作品が1988年に発表されたことに驚くしかない、今なお色褪せない物語である。今でこそインターネットでの情報の伝わり方を見れば容易く想像が付くかもしれないが、当時ここまで鮮やかに表現できた著者は、いったいどのような目を持ち世界を見ていたのかと思う。子供達のゲームへの熱狂、爆発的に広まる噂、不確かなリアル。呪いに日常を侵食され死への恐怖に追いたてられているように見えるが、物語が進むにつれ加速する疾走感と焦燥感は、終わりの予感そのもの。今日の自分は明日いないと知り、不意に涙が零れそうになるあの頃の。
2021/09/12
shizuka
初読、高校時代。衝撃的だったなあ。ハードは違えど、やってることにそうそう変わりはない。対象物が無。なのに必死。小学生が空洞になっていく。「ノーライフキング」とは絶妙なタイトル。20年以上前に書かれたある種警鐘の意味合いもある1冊だと思うが、現状さほど変わってないね。ずっとこのまま世界は回り続けるんだろうなあ。
2015/10/19
shiman
遅まきながら。ゲーム黎明期のドット絵や単純な音の少ない情報の間に世界が広がっていたのを思い出す。出版当時に読んでおけばよかった。
2017/08/26
giant_nobita
「ライフキング」というゲームソフトにまつわる、「ノーライフキング」の呪いの噂が子供たちの間に広まる。大人たちはその噂に勝手な根拠を付け足すことで、ノーライフキングの騒ぎは収まり、子供たちは身近な人間関係の噂に熱中する。しかしTVタレントが子供たちからライフキングを取り上げるキャンペーンを張ると、子供たちは異常な行動に走り出す……。このプロットは破綻しているのでは。子供たちはノーライフキングの噂からすでに冷めているのだから、TVタレントがゲームを攻撃するのも変だし、子供たちも飽きたゲームに執着しないだろう。
2019/05/02
竹生
ネットが高度に発展した現代社会ではもう見られないかもしれない、噂の話。小学生の頃、根拠もないのに信じて熱中していたあの感覚を思い出せる一冊。噂は人を伝うにつれて尾鰭がついて現実味をます。不思議なのがポケモンなどに関する噂はネットが発展していなかったのにも関わらず、日本全国の小学生がその存在を知っていたことだ。僕は世代が違うので体感したことがないためその熱狂が少し羨ましい。
2023/02/27
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