夜の桃 (新潮文庫)
夜の桃 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
この作家の特質だと思うが、すべてが軽やかに都会の風景の中を泳いでゆく。見方を変えれば、軽薄だとしか言いようがない主人公たちだ。雅人には40代の美しい妻、30代の妖艶で豊満な愛人、そして20代の初々しい女性と、およそ40代の男の理想というか欲望を体現させている。それは、おそらくは作家自身の願望なのだろう。小説の全編はあたかも官能小説であるかのごとく情交の場面が続くが、残念ながら少しも官能的ではない。描写があまりにも即物的だからだ。また、あのような結末でもつけなければ小説として完結しようがなかっただろう。
2018/09/27
遥かなる想い
石田衣良の本は「4TEEN」「美丘」に次いで 3冊目だと思うが、ひどく官能的な小説で驚いた。美しい妻がいて、魅力的な愛人がいて、仕事も順調..そこに現れる少女のような女。そして溺れていく..性愛を究極的に描ききったとあるが、どこか白石一文の本の構成に似ている感じがしていた。最後の破滅は少し不可解で、明日に繋がる終わり方にして欲しかった。
2011/02/20
kaizen@名古屋de朝活読書会
新潮百年】六本木、広告会社、夜の店。東京のうわべだけの社会を描写しているのだろうか。著者にとって都合のいい人間だけが登場するのは、雑誌連載小説にありがち。週間新潮に連載したので新潮文庫にしたものだろうか。出版社に貢献しているので売り出し中なのだろう。
2015/01/27
優愛
既婚者でありながら二人の愛人と関係を持ち日々に満ち足りる一人の男。「この世界に意味はなくても、きっとその柔らかさには意味があるような気がするのだ」大層楽しんだようね。私じゃない女の身体、その声を。ねぇ。"大人の付き合い"とでも言えば、許されるとでも思っていたの?残念ね──全てが上手くはいかないわ。甘美な贅沢、快楽は。魅力的で、底のない沼。優越感に浸って気持ち良いだけで終わりたいのなら、もっとやり方があったはずでしょう?守りたいと思うなら、隠し続けてほしかった。たとえ嘘をついてでも私にだけは、永遠に──。
2017/11/29
じいじ
この作品「賛否両論―どちらかというと否が多い」と聞いて、俄然読んでみたくなりました。広告会社45歳の社長が主人公。IT時代を巧みにとらえて仕事は順風満帆。妻とも至極円満。そして、二人の美女からも恋い慕われての精力的な日々。著者は、男の本性を自身の経験、作家としての妄想を主人公に結集して描きあげたのでは、と思う。読み手には、現実では実行不可能な男の願望を、小説のうえで実現してくれているのではないだろうか。辛口を一言。官能・エロさは好むところですが、如何せんセックス描写の場面が多すぎて食傷気味です。
2018/09/02
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