とりかへばや、男と女 (新潮文庫 か 27-1)
とりかへばや、男と女 (新潮文庫 か 27-1) / 感想・レビュー
ケイ
【とりかへばや物語】をとっかかりに、ユング的に男性的、女性的と言われるものについて分析。ギリシャ神話やその他の類似した物語を引用しながら様々な考察が行われる。河合さんらしく、難解なことも平易に噛み砕かれ、理解するのは難しくない。しかし、引用されている男女の入れ換えは、ある程度の年齢になった時点で本来の性に自然の力のようなもので引き戻されるし、ギリシャ神話においては神の力で性転換もなされる。本の趣旨とは違うが、本来性と心の不一致で悩む人が読むと、かえって心の痛みが大きくなるのではないかと思った。
2016/03/22
佐島楓
「とりかへばや物語」という男女の入れ替わりを書いた古典を元に、男女の心、ユング心理学について書かれた本。もともと「とりかへばや」が複雑な構造の物語なので、難解な書物になってしまっていた。古今東西、男女の入れ替わり物が書き継がれてきたのはなぜか、自分の中の男性性への不思議など、少しではあるが触れることができた。
2013/01/25
かふ
西欧のキリスト教社会の二分法の論理からユングはアニマとアニムスという無意識の自己を発見したが、ユングもあまりにも二分法に捕らわれていて中間領域を見いだせなかった。河合隼雄はその中間領域として両性具有などの物語や日本の古典の世界から西欧社会とは違ったユング心理学のシステム論を組み立てる。その大きな解釈とされるのが『とりかへばや物語』の男女の入れ替え物語であった。それと対比される『トリスタンとイズー』はロマンチック・ラブの集大成の物語構造を持ち、そこにキリスト教社会(世界)の構図もあるとする。
2023/02/01
みどり
とりかへばや物語を読んだことがないのだけれど、それでも楽しめる面白さ。人間は二分法の呪いにかかっていると河合先生が仰るのは、たしかに感じるところがある。最近は流れも変わってきて、安易に「女らしく、男らしく」というと苦しむ人たちがいるということが明らかになってきたが、とりかへばやの時代では現代より一層、男女に関して二分法は色濃かったのではないかと思う。海外と大きく違う点が、結婚=物語の終わり、幸せにつながらないのが日本の物語の特徴、姉君は再婚もしている。その通りだと思う、結婚はゴールではない。
2021/05/03
rinakko
“内なる異性”の章が読み返したくなり、再読。“内なる異性”とは、“内なる声である対話者”でもあるか…と思い、サロート『子供時代』を読みだす前に。もちろんほかの章もとても面白く、『とりかへばや』という稀有な物語の特異さと魅力についてこれでもかと説かれている。バルザック『セラフィタ』に触れている件もあり(短いけれど)、最近読んだばかりなので興味深い内容だった。
2020/08/07
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