こころと脳の対話 (新潮文庫)
こころと脳の対話 (新潮文庫) / 感想・レビュー
mukimi
「客観的に白か黒かきっちり決める」科学 vs 「グレーゾーンで泳ぐことに価値がある」心理学(河合先生ver)の二項対立が本書の根本にある。茂木先生はどちらに転んでも楽しそうな柔軟な人だから話が広がっていく。学歴や収入などの細部に飛びつかず一人の人間を全体で見たときの面白さ、因果関係というしがらみをほぐすことで得られる個人世界の広さと豊かさ、夢やインスピレーションをしっかり解釈して自分の深層心理や夢と現実の間を遊ぶ楽しさ、を紹介し「自分は人の二倍楽しんで生きてますよ」という河合先生、やはり最高だった。
2022/05/27
パフちゃん@かのん変更
セラピストの河合先生と脳科学者の茂木先生の対話。どちらかというと河合先生の話が多かった。パーキンソン病や抑うつ症が脳の電極刺激で止まる話も河合先生が話題にされてた。茂木先生が箱庭をされた話とか、河合先生がタクシーに乗ると運転手が身の上話を始めて違う所へ行ってしまう話が面白い。カウンセリングはまっすぐに中心を外さずに聞いていれば相談者は自力で治って行く。奥さんの悪口を言い続けている人にはひたすら聞く。「奥さんは置いといてあなたは・・・」とやるとダメ。真っ直ぐ聞いていれば後何回で治るとか分かるらしい。
2016/03/28
ケイ
表紙からは柔らかい話を想像するが、知の巨匠が寄れば話の内容は深く、熟考して読まないと読み落としが出る。お二人の三回にわたる会談の内容のため、夢の話のように繰り返されると理解も進む。村上春樹との対談でも思ったが、河合さんの頭の奥行と同様、心の度量に感服する。茂木さんは、河合さんになついている賢い子供のようだ。顔が向い合わせでなくとも、人に向き合って話に心を傾けられる素晴らしさ。「生きることはしんどいこと。それを夢の中で調整する」「人には分析だけでなく関係性が必要」。読んだだけで読者も癒される凄さだ。
2014/03/04
寛生
【図書館】最初のセッションで服や顔ではなく「私の魂」を見ていたと5年かかって治っていった離人症性障害のクライエントの河合先生へのコメントに心を揺さぶられた。いつもながら河合氏が自らの知識などを謙遜されているが、相手が誰であろうと踏み込む時にはしっかり踏み込み、喧嘩をする時には決して負けない喧嘩の仕方に思いを馳せる。両氏の対話は茂木氏の方が腹を割っていないように感じるが、これも偶然ではなく、そこに生じた関係性なのだろう。河合先生がクライエントのことを想いながら箱庭をつくるとおっしゃられている所も印象的。
2014/02/18
はる
こうだから子どもが不登校になった、という根拠があれば科学的だが、曖昧で因果的には説明できないけれども「これしかない」というこの必然性が大切なのだということ。教育でも、科学的に納得のいく説明ができないが、子どもの行動が良くなるとか、あるはず。科学的なことと、そうでないことは矛盾するけれども、こころにはそんな側面があるのだなとしみじみ思った。
2018/07/23
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