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からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

作家
梨木香歩
出版社
新潮社
発売日
2001-12-26
ISBN
9784101253336
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からくりからくさ (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

蓉子の祖母の家に暮らす4人の女たちと、りかさん。あの家は、蓉子たち4人にとっては、まさに天蚕(ヤママユガ)の繭だったのだ。エンディングは想像を超えるが、不思議にこれほどに納得できるものもない。シルクロードのかなたから連綿と続く空間と、そして赤光の「時」から、あるいはもっと遥かな過去から延々と続く時間に想いを馳せる、梨木香歩の想像力と創造力。それらが珠玉のような梨木の言葉の「染め」と「織り」によって語られてゆく。そして、読後には、ひそやかでしみじみとした感動と、静謐な余韻が残るのである。最後の2行は秀逸。

2012/06/27

さてさて

『人は何かを探すために生まれてきたのかも。そう考えたら、死ぬまでにその捜し物を見つけ出したいわね』と言う紀久の言葉に『本当にそうだろうか。それなら死ぬまでに捜し物が見つからなかった人々はどうなるのだろう』と思う蓉子。そんな蓉子が『私が探しているのは、隠れているりかさんなのだろうか』と自問するこの作品。そんな作品では、おばあちゃんの家で暮らす四人の女性の日常が描かれていました。様々な要素を盛り沢山に書き記す物語の中に『人はきっと日常を生き抜くために生まれるのです』という梨木さんの拘りを強く感じた作品でした。

2022/11/07

風眠

(再読)祖母が遺した古い家。蓉子、紀久、与希子、マーガレット、女四人の共同生活。『りかさん』で張られてた伏線が回収され、市松人形のりかさんと、蓉子の祖母の過去などが明かされていく。染色、織物などの手仕事を通して、遥か昔から受け継がれてきた女たちの想い。顔も知らない、けれども、確かにその時代を生きた女達。苦しくて燃えたぎるような心を、織物に、人形に、注ぎ込んで、もがいて、それでも生きた日々という歴史。その日々は今に連なり、未来へと受け継がれる。りかさんを焼いた火は、そんな女達の埋み火だったのかもしれない。

2015/03/27

SJW

古い家で4人の女性が、糸を染め、機を織り、野草を食べたり、自然を存分に楽しむ生活を始めた。そこの中心には蓉子の市松人形の「りかさん」が居て、4人の様々な葛藤や思いがその心地よい世界に連なっていく。人形、野草の料理、唐草模様、染物、機織り、シルクロードと話は広がり、話の終結が不安になったが、「りかさん」で締め括られて落ち着くことができた。描かれた世界は自分の世界とは全く異なるので、新しいことを経験したように感じる。梨木さんは、自然を楽しむ生活を描くのが素晴らしく、自分もしてみたいと考えるが、(続く)

2018/03/27

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

三、四人の姉妹だったり、それぞれの個をしっかり持っている女性たちの同居だったり、そういう話はなんだか無条件に好きになってしまう。一緒に住んでいて個々に独立していて、支えあったり妬みあったりする親密さ。 本を読む上で、作品のテーマについて突きつめることはあまりやらない(できない)のだけど、梨木さんのそれはシンプルで分かりやすく、そして実践が難しく尊い。理解できないものを、そのまま受け入れて自分とは別のものとして尊重するということ。地に足をつけて、日々の生活を大切に丁寧に営むこと。四季折々の描写が素敵でした。

2019/02/20

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