十九、二十 (新潮文庫 は 22-1)
十九、二十 (新潮文庫 は 22-1) / 感想・レビュー
たか
原田マハのお兄さんの作品。爽やかさはなく、虚しさがリアル。特別な才能があるわけでもなく、運が良いわけでもない。本命の彼女に振られ、バイト先のお姉さんと成り行きで関係を持つが、病気をうつされる。 ギャンブル狂の父親が転がり込んできて、挙句財布からお金を抜かれてしまう。 何にでもなれそうな気がした子どもの頃から、現実を見なければいけない十九、二十へと年を重ねたあの頃…。 あの頃した決断が、人生の分岐点だったかもしれない。寂しい青春だが、何故だか心に残る作品だ。C評価
2024/01/05
背番号10@せばてん。
1993年1月6日読了。作者は原田マハのお兄さん。あらすじは忘却の彼方。
1993/01/06
ちぇけら
誕生が夜明けならば十九歳の終わりは夕焼けだ。巨大な夕陽に照らされた景観はあまりに圧倒的で、いつもは騒がしい街も、木々も、人々も、茜色に染まる。ぼくは固く握っていた拳を思わずほどいてしまう。輝かしく生きることへの諦めと、夢を持つことへの虚脱感が入り混じる。「本当に欲しいものはな、欲しいと思ったその瞬間に捉えないと、すぐどこかへ行っちまうんだよ」なにもかも、夕闇が溶かしてしまった。二十歳。胸が苦しくて、血も涙も流れない。汗だけがいつまでも流れ、ぼくは足の裏にかすかに感じたんだ。新しく輝きだす、明るい陽の光を。
2020/06/30
ATS
★★★感動もない、喜びもない。この読後に訪れる虚無感に近い感情はなんだろう、不条理や不平等とも違う。どこまでいっても希望や夢なんてない。なんとも哀しく、切ない青春物語だった。『本当に欲しいものはな、欲しいと思ったその瞬間に捉えないと、すぐにどこかへ行っちまうんだよ』(P162)
2016/09/07
tomo
20歳という年齢が特別なものに思えたのは、19歳最後の日までだった。記念すべき20歳になった瞬間、天使がクラッカーを鳴らしてくれるわけではないことは承知していたが、ガックリと来た。 そうして時が流れるように過ぎ、根拠もなく万能だったはずの自分が大河に流れる一葉だと認識する。 誰にでも、自堕落で世間ずれした大人たちに繋がる大河が待ち受けているものだろうか。粘着質な暑さに不快感を感じながら、一息に読んだ。今、顎が胸にくっつくほどうつむいている。
2021/03/16
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