あるべき場所 (新潮文庫 は 22-3)
あるべき場所 (新潮文庫 は 22-3) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
原田さんの初期の純文学の短篇集。ユーモアたっぷりのエッセイとは異なった味わいがある。都市生活者がふと感じる違和感や孤独、恐怖を鮮やかに描き出した短編ばかり。ここに描かれているのは一昔前の日本の雰囲気で、今では感じ取るのが難しくなっているものもあった。後味の良い作品はないのだが、それでも80年代から90年代ぐらいの空気を懐かしく感じた。一番好きなのは冒頭の「空室なし」。部屋探しをする主人公のやり切れない気持ちが描かれている。芥川龍之介の名作「蜜柑」に似た結末だが、こちらの方がはるかにほろ苦い。
2018/07/27
背番号10@せばてん。
【1991_野間文芸新人賞_候補】1994年6月7日読了。作者は原田マハのお兄さん。あらすじは忘却の彼方。(2020年3月15日入力)
1994/06/07
エドワード
弱ったなあ。間が悪いなあ。不動産屋で出物の物件を見つけたところ、幼児と乳飲み児を連れた母親とかちあわせた学生クン。娘の誕生で乗り込んだ新幹線で隣に乗り合わせた男は、母親の葬儀へ向かう人だった…。コミカルなのにしんみりしてしまう二編。娘が成長するにつれ、夫ではない男に似ていく。握った人間は必ず人を刺すと言われる危険なナイフ。とんでもないホラーな二編。そして表題作は、タイミングが一瞬でもずれれば大きく日常がゆがんでしまう、息づまるサスペンスだ。マンションのドアに不自然にとりつけられたかんぬきが怖いよ。
2015/10/04
ATS
★★★本作も秀作揃いだった。空室なし・北へ帰る・あるべき場所・何事もない浜辺・飢えたナイフの5つの短編が収録されている。日常だけど、非日常という、この歪な世界観は引き込まれます。私は空室なしが好きでした。大学に通う青年と二人の子どもを連れた女性が不動産屋でたまたま同じ部屋を借りようとするだけの話なのに、なんともいえない哀愁のようなものが迫ってくる。ぜひ読んでもらいたい。『近いとか遠いとか、そういう距離を表す物差しで親子の間を計るのは、きっと愚かなことだ……』(P79)
2016/09/13
@nk
大学生の頃に手にした本書。カバーもなく、裸の状態で云十年、押入れの奥に潜んでいた文庫本。全5編、3編目迄の記憶が薄っすら有り。広大な情景でなく焦点された濃密な場面、そのあてがう構成が好みであり、また文体に纏う凛とする空気が良い。ふとよぎる逡巡からの展開、そしてその着地点が有るようで無いような。うーん、良い味がある。◇そういや原田マハの兄、なんですよね。読了すれば著者情報をWikipediaで探り、他作をざっと確認。そんなが毎度の流れで、エッセイが多い著者みたいですが、小説を読んでみたいと思った。
2018/02/11
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