ギンイロノウタ (新潮文庫)
ギンイロノウタ (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2つの中篇―「ギンイロノウタ」と「ひかりのあしおと」―を収録。それぞれの主人公の有里(中学生から高校生に)も誉(小学生から女子大生に)も、共に現実との間に大きな違和を抱えている。そして私たち読者もまた、彼女たちと世界との齟齬に巻き込まれることになる。それこそがまさに作者の狙いなのだろうが。いずれも怖い小説だ。狂気とはいうものの、それらと現実との接地面は極めて薄い。にもかかわらず、私たちは彼らを排除する側に回っている。これら2つの作品は、そうした私たちに対する抗議であり、負のシュプレヒコールだ。
2018/07/09
さてさて
『自慰を繰り返すたびに身体の中に現れる銀色の星屑』に強い思いを抱く主人公が大人になっていく中でもがき苦しむ様を描く表題作〈ギンイロノウタ〉と大学生の日常を描く〈ひかりのあしおと〉の二編が収録されたこの作品。そこには、村田さんならではの振り切った描写の連続に、10代の脆い青春を生きる二人の少女の心の叫びが赤裸々に描かれていました。不気味な表現の数々に独特な雰囲気感が形作られるこの作品。『性』の描写が重々しさをもって迫ってくるこの作品。何かに押さえつけられるような感覚がいつまでも尾を引く素晴らしい作品でした。
2024/04/02
シナモン
図書館本。「ひかりのあしおと」、主人公より母親の愛菜ちゃんが気持ち悪い…。「ギンイロノウタ」、幼い頃から両親にあんなに否定されて育つなんて…。こんな成育環境だからといってみんなああなる訳じゃないけど、なるかならないかは紙一重のような気もする。両方とも読み進めていくうちにどんどん狂気がエスカレートしていく感じ。久しぶりの村田作品は朝読書には少々強烈すぎる内容でした。お腹いっぱい。しばらくはいいかな。でもまた読みたくなるんだよな。
2019/11/22
ムーミン
これまで何人ものたった一人で困り感を抱え苦しんでいる子たちと出会ってきた。最初は狂言なのか妄想なのか、そこまでして人から気を引こうとしているのか半信半疑で、でもその子の存在や想いを大切に向き合ってくる中で、私にはまるで想像もつかない世界の中をだれにも理解されずに生きている子が確かにいることがわかってきた。この作品を読みながら、苦しくてしかたなくなってしまった。自分の目の前にこういう子が現れたとしたら、どうするだろう。そんな気持ちのまま読み終えた。
2020/08/29
harass
表題作のみ読む。「コンビニ人間」でこの作家を知り2つ目の読書。普通ではないヒロインが狂気をはらんでいく話であるが読んでいる自分に刺さる箇所がある。ただ、コンビニのほうが一般向けというのはそうかもしれない。この作風が著者本来のもののようだ。卓越した表現力や、さきの読めない展開があるが、いろいろ戸惑いつつ読み終えてしまった。「価値が低いなら私は安さで勝負するしかない。私は誰よりも私を安く売るんだ。そして誰よりも喜ばれて見せるんだ。」こういう言葉からありきたりな方に進まないのはあっけにとられる。
2018/12/16
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