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これはペンです (新潮文庫)

これはペンです (新潮文庫)

これはペンです (新潮文庫)

作家
円城塔
出版社
新潮社
発売日
2014-02-28
ISBN
9784101257716
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これはペンです (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

無邪気さと可愛らしさをまとった表紙。過度なまでの平易さを強調したタイトル。そして、その冒頭の一文がこれ―「叔父は文字だ。文字通り」。まだ剽軽さを装っているかも知れない。しかし、読者は間もなく、また否応なくその難解さに気づかされる。小説中にアラン・ソーカルのことが出てくるが、この小説はあるいは、あえてそんな風に書かれたのかという想いも兆す。恐ろしく影のない物語だ。湿り気もまたない。どこまでも、あっけらかんと乾いた小説だ。ここでは、他者は実態を持たず(あるいは持っているのか?)、時間もまた解体される。

2015/06/04

masa

姪:普通とは何か。敢えて答えるなら、普通とは何かという疑問を抱くことこそが普通だ。ことばにできることは、ことばにできたつもりの想いにすぎず、ことばと想いの差分は暗号化されフィードバック回路を循環参照し続ける。でも恥じることはない。何度も書かれる小説はなくとも読まれる小説はあるように、ことばは誰かに伝わることでのみ完成するのだ。創造すべく想像せよ。This is a pen.これを月が綺麗ですねと読む。然れどpen≒ken。つまり、Dis is a pain.は同じ月を見ている。きっとそうあるべきだ。:叔父

2019/12/02

つくよみ

★ 叔父から姪に送られる手紙の数々。実際に会った記憶は無いが、不可思議な形式の手紙の存在が、叔父の輪郭を形作っていく「これはペンです」超記憶力を持つが故に、己の時系列感覚を崩壊させた父。その父の在り処をわたし(=叔父)が探す「良い夜を持っている」2編からなる作品。言葉遊びを交えた、言葉達の織り成す文章構造そのものを楽しむ作品と言えるだろうか。物語を楽しもうと期待すると、肩透かしを食らうかと思われる。一読では到底掴みきれず、再読、再々読を繰り返して、初めて味わいつくせる(であろう)文系のSF?難解だった。

2014/03/31

コットン

2作品が収録されている。表題:「叔父は文字だ。文字通り。」から始まる文字という具体的な事柄が叔父からの手紙によって形而上学へと迷い混むような不思議な感覚の小説。『よい夜を持っている』:これも同様のテイストで超記憶を持つ男の話。多重のルビ打ちが面白い。

2020/10/27

harass

ようやく読み終える。表題作と「良い夜を待ってる」の二本の中編。科学や哲学のメタファーや思考実験などを暗示、明確に示し、それを文学的な表現で染めて、奇想としかいいようのない世界を作っている。ボルヘスやカルヴィーノを連想。ペダンティックな知識があれば、あれのことかと、理解やイメージがしやすいのだが、一般的な読者には追いつくことができないだろう。例のない世界で、戸惑う人も多いはず。自分も数冊この著者の本を持っているが、最後まで読めたものが少ない。だが時おり炸裂するリリシズムに感心する。この著者の入門として。

2018/11/11

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