暗幕のゲルニカ (新潮文庫)
暗幕のゲルニカ (新潮文庫) / 感想・レビュー
bunmei
今回の画家は情熱の天才画家ピカソ。近代美術のデフォルメされた絵画の中で、反戦の象徴とも言える『ゲルニカ』がモチーフ。過去のヨーロッパにおけるナチスを筆頭としたファシズムによる弾圧と現代の9.11同時多発テロとの、2つの争いをタイアップさせる中で、ピカソの私生活と共に辿る文章構成。数奇な運命を辿った『ゲルニカ』に込めた思いや見方、考え方が伝わってきます。ピカソと主人公・瑤子の中に燃え上がる反戦への思いと作品への情熱がほとばしる作品です。これまでのマハ作品の中で、一番エネルギッシュな作品でした。
2018/07/23
三代目 びあだいまおう
深い感動が止まない。たった一枚の絵画に稀有な小説家がもたらした奇跡の足跡!『暗幕のゲルニカ』偉大な芸術家ピカソの代表作ゲルニカは反戦を訴える無言の叫びであった!美の想像主、既成概念の破壊者たるピカソ。故郷を襲った無差別攻撃の不条理に対し、命の危険を省みず反駁した魂の大作!途中で既に『スッゲェ』っと震わせてくれる小説も珍しい!本作はその魂が宿るかの如く『叫び』が時空を越えて響き合う。物言わぬたった一枚のカンヴァスが、千の兵器、万の言葉よりも平和を訴える力となる。芸術の無限の力をこの小説は教えてくれた‼️🙇
2020/05/07
kk
『ゲルニカ』に込められたピカソの切実な想い。観るものが覚える戦慄と平和への憧憬。現在と過去とを結ぶ2つのエピソードがきれいにつながって、この重くて深いメッセージが自ずと読み手の胸に迫ります。やはりマハ先生はすごい方ですね。
2020/01/11
Nao Funasoko
ファシズムの時代のドラとテロの時代のヨーコ。天才の名画に関わる2人の女性の物語がひとつに纏まる。 二つの時代を繋ぐ美の巨人、パルド・イグナシオとルース・ロックフェラー。この物語の脇を固めるふたりによる直接交渉とそこからおこるラストの描写はとても素晴らしかった。 名画がモチーフだからというわけでもなかろうが、要所要所で登場する鳩のドローイングも含め全編を通してとても映像的な作品だった。
2018/08/08
mae.dat
本書は独立した話になっているので、いきなり読んでも全く問題ないです。でも『楽園のカンヴァス』を先んじて読んでいると、重要人物であったティムがさらりと出てきたり、創作していた時代の物語と、現代の物語が交互に語られる構成が同じであるのも楽しいく嬉しいですね。『ゲルニカ』の創作背景はなんと無しに知っていましたが、それをしっかりと学べたのは嬉しかったですし、9.11アメリカ同時多発テロからのタリバーンのアフガニスタン紛争に掛けるのは、ストーリー・テラーとして流石ですね( ¨̮ )。
2023/05/05
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