常設展示室 (新潮文庫)
常設展示室 (新潮文庫) / 感想・レビュー
さてさて
美術館へ訪れるきっかけは特別室で展示される企画が起点となる場合が多いと思います。しかし、特別室に展示されるものがその人にとっての”特別”であるかは別物です。何かおまけのような印象も受けかねない「常設展示室」に飾られる作品たち。この作品では、私たちの感情の中にそれぞれ存在する”特別”な絵の存在に光が当てられていました。わかりやすい筆致で、それぞれの絵が読者の眼前に浮かび上がるかのように描かれていく安心感のある物語の中に、それぞれの主人公が見る”特別”な絵画に、共に思いを馳せる、優しさに満ち溢れた作品でした。
2022/08/03
mae.dat
ひとりの女性と一つの絵画作品を巡る短編6話。お得意と名高いアート小説、やっと読めました。各話の緩急が凄いなぁ。恥ずかしながら、画家の名前は聞いていても、作品名までは存じ上げないものも多く。しかし、検索すれば即辿り着ける現代の素晴らしさよ。『真珠の耳飾りの少女』は流石に知っておりました。しかし、それではなく、少女の視線の先にある窓の風景の方を切り取るとは。実際にそう言う環境に常設展示されているのでしょうか? 太陽光が入る場所では作品がダメージを受けそうにも思えますが、流石にそれはケアされているのでしょうね。
2022/07/30
hit4papa
キャリアウーマンが主役のアートにまつわる6作品が収められた作品集。仕事に邁進する30代・40代の女性たちが、ふと立ち止まった時に、アートによって原点に立ち返る、という展開です。美術が分からなくとも、迷いの中で、例えば、音楽、映画がきっかけで自分を取り戻したことがあるなら、共感するでしょう。名声を手にした美術評論家が心を惹かれた無名の作家の絵「道」は、本作品集のとりに相応しい感動作。家族の絆を念押しされて、ぐっときました。その他、メトロポリタン美術館の日本人スタッフが取り組むワークショップ「群青」等。
2023/06/11
あきら
感動したなあ、これは。 とても読みやすく、絵画鑑賞の敷居を下げてくれる。 また、絵画と触れ合うことに、正確な解釈や知識は必ずしも必要ないと教えてくれる。 人生にそっと寄り添ってくれる絵に出会いたいな、と思う。美術館に足を運びたくなりますね。
2022/03/06
Nobu A
原田マハ著書3冊目。18年刊行。ノンフィクションやルポも書くと知り、頁を繰る前はてっきり前者だと思っていた。良い意味で期待を裏切られた。そして原田マハはズルいと思う。歴史があり芳醇で重厚な芸術を題材にするなんて。しかしそれを自在に調理出来るのも美術史に造詣が深く秀逸な筆致を持つ筆者だけかも。世界の名画をテーマに6編のエッセイを収録。最後に東山魁夷を持ってくるところに作者の粋な意図を感じる。第4編「薔薇色の人生」のような官能的且つ滑稽的な文章も書くのにちょっと驚き。久しぶりに上質な短編集を堪能した気がする。
2023/10/07
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