神の棘II (新潮文庫)
神の棘II (新潮文庫) / 感想・レビュー
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
このての作品を書く日本の作家がいたことにまず驚いた。一人の神格化された男・ヒトラーの思想の下、大虐殺を繰り返す第二次世界大戦中の欧州を舞台に、戦争と宗教をテーマとした千ページを超える大作。そんな時代を運命の悪戯のままにそれぞれに生きた二人の若者。ときに信頼し、ときにすれ違い、目を覆いたくなるような残虐な仕打ちとは対照的に、二人の運命を映しているともいえるような静謐なラストが温かく胸に沁みる。最後に見せた笑顔こそが、全てを受け入れた者への、神からの赦しの証であったと信じたい。
2017/10/22
アン子
ナチスも坊主も指導者原理で基本変わらんと悟ったアルベルトは愛する者のために生き死ぬ事を選んだ。 マティアスは苦悩し抗いながらも教会と生きる事を選んだ。 そして誰もが何かしら後悔や苦しみや怒りや嫉妬の棘を纏っていく…。 そう考えると無信心の自分は、信仰心や命をかける程の想いのある人が少し羨ましく思えてきた。平和の中ではそこまでの思いは不要だと言う事は幸せでもあるが。
2021/02/22
たいぱぱ
何故自分が泣いているのかわからない。哀れみなのか?怒りのためか?それとも自分の心の奥にある罪の意識か?第二次世界大戦ナチスドイツを舞台にしたSS将校と司祭を目指す2人の幼なじみの物語は、驚愕を伴い怒涛の展開を見せる。残虐さ、嫉み、優しさ、人間の持つ感情の全てが地獄の底で浮き彫りとなる。ナチスがやった言語道断な行いは決して過去の事ではないと感じる。ナチスも連合軍もカトリックも全て人間が作り出してる虚構。神なんて居ないそこに人間のエゴが絡むのは間違いない。悲しきかな現代でも全く同じなのだから。
2021/03/08
さや
最後の方でミステリだったのかと気づく。戦争と宗教がテーマの人間ドラマとして読んでいたので全く謎解きを考えていなかった。でも、その謎も人間の心理が複雑だったから起きたことで、少しずつそれぞれの思惑がすれ違った結果なのかと思う。全ては神のみぞ知る。マティアスとアルベルトは、お互いがお互いの人生最大の棘だったんじゃないか。人生の転換や見方が変わるには棘が刺さったような痛みが伴うものなのかもしれない。最後のページは泣いた。やはりテーマは重いが宗教知識が薄くても読みやすかった。
2021/03/09
Rin
未来は、日々の生活は続いていく。どんなに悲惨で地獄のような出来事が降り注いできても。ナチスが行ったこと、アメリカが、イギリスが行ったこと。立場が異なれば捉え方も感じ方も変わるけど、やっている事は同じ。人を人とも思わない残虐な殺戮が行われる。目を覆いたくなる様な描写も、眼を逸らさず受け止めなければと思わされる作品。選べる道は限られていて、どれも過酷で心が壊れそうな時代。マティアスとアルベルトの歩いた道に、アルベルトの生きざまに、その最後の言葉に胸が熱くなる。繰り返してはいけない歴史だと再確認させられました。
2016/03/25
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