引越貧乏 (新潮文庫 い 21-4)
引越貧乏 (新潮文庫 い 21-4) / 感想・レビュー
阿部義彦
古書市にて入手。私と著者との出会いは多分、中学時代に麻雀を覚えた時に本屋で見かけた双葉書房の新書判の麻雀小説群でした、有名な「麻雀放浪記」ほか、「東一局五十二本場」「牌の魔術師」等。麻雀研究誌も買ってたので当時の麻雀新撰組の記事で写真を見て、眠そうな顔で写ってたのを覚えています。その後思春期を過ぎて、笑芸人の生き字引として有名な事や、直木賞を受賞した事をしり、「怪しい来客簿」を読んで才能に痺れました。そんな色川さんの五十歳からの連作。ナルコレプシーを患ってからの無頼者の人生模様、奥様が魅力的で笑が溢れる。
2024/06/26
はと
再読。短編7篇。色川氏は、最終篇「引越貧乏」の脱稿3か月後に亡くなった。独特のバランス感覚と優しさ、独自の道しか歩んでいけない者の深い孤独と屈託。かつての色川氏の作品の中では、彼の孤独や屈託が、マグマのようにふつふつと高い温度で湧き上がり、見えない光を放つようだった。力強い生命力やエネルギーに溢れ、それでいて常に失われないさらりとした冷めた視線。他の誰にも書けない色川武大だけの文章。でも、この本の作品群には、もうそんな渦を巻くようなエネルギーは感じられない。穏やかで寂しくて、読んでいてひどく切なかった。
2013/10/05
桜もち 太郎
最晩年に書かれた連作短篇集。大変な人生を歩んできた色川さん。本物の不良少年だった時代、若くして勝負師として賭けごとに狂う青春時代。考えられないような体験から生まれた数々の私小説は、自分の狭い人生観を広げてくれる。「自然の理の後を追う生き方しかできない」と色川さん。ありのままの優しさが詰まった作品だった。
2015/06/06
鮎川まどか@AnxAn
◆初色川。 現代娯楽小説のようであり、滑稽本のようであったり。 学とは無縁のはずなのに、漱石の香りを感じたのは私だけか?
2011/02/06
桜井青洲
晩年の短編作品。著者の作品といい文章といい非常に魅力的である。鋭い着眼点で退廃的に語り、強要や訴えかけるような感じでもないのに読み手に響く。それと同時に周りの登場人物がキャラクターとして活き活きしており小説としても非常に面白い。著者の自他ともに鋭くそして鮮やかに人を文字で表現するところに幅広い交友関係が表れているのだと思いました。
2014/04/29
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