乙女の密告 (新潮文庫 あ 75-1)
乙女の密告 (新潮文庫 あ 75-1) / 感想・レビュー
absinthe
面白かった。乙女の集団は恐ろしい密告社会だった?大学の授業の題材となったアンネフランクの日記。彼女が密告により収容所に拘束されたエピソードと、ある謎について密告を恐れる主人公。関連の全くないはずの話題だが、サスペンスのようにドキドキ読めた。エピソードがあざとい程に隠喩めいている。absintheはスピーチコンテストについて知らなかったのだが、ここまで頑張るものなのか。
2021/07/09
ヴェネツィア
2010年上半期の芥川賞受賞作。小説の舞台は、著者自身の体験に基づく京都外国語大学のドイツ語科。『アンネの日記』を軸に物語が展開してゆく。そして「真実は乙女の祈りの言葉ではない」と、「アンネは密告された―わたしは密告される」という2つがキー・コードとなっている。選考委員の中でも、特に『アンネの日記』に深い思い入れを持つ小川洋子氏はこの作品に好意的だが、インパクトが弱い上に随所に素人っぽさが目立つ。しかも、これでは共学の外大というよりは、もう全くの女子大だ。そもそも「乙女」が作品のキーワードになるようでは。
2013/05/31
fwhd8325
新しい出版社palmbooksから赤染晶子さんのエッセイが発売されました。エッセイは、まだ未読ですが、プロフィールを拝見し、先に小説を読んでみました。この作品が芥川賞を受賞しているのですが、とても読みやすく、面白かったです。アンネの日記、アンネ・フランクとの関わりを新鮮な切り口で描いています。そこに乙女という無垢な存在がいることが素晴らしい。
2022/12/29
えみ
学生だったら夏休みの読書感想文に選んでいただろう本書。繊細かつ緻密に表現される「乙女」達の心の動きが素晴らしかった。訴える叫びが聞こえてくる点に関しては『アンネの日記』と同等とも言える。アンネ・フランクの身を切るような無言の悲鳴とユダヤ人迫害の裏で動いていた密告者。その恐怖と苦悩を現代に生きる女子大生が『アンネの日記』から自分事として深く感じ取っていく。悲劇の少女として理解していたアンネの存在はやがて全く別のものへ…。「自分」の否定と「他者」の肯定がもたらす「自分」という証明に強い意志を感じる一冊だった。
2022/07/17
こばまり
個かつ集団で、今かつ昔で、日本かつドイツで、私かつアンネ。それらが交錯という激しいものでなくあくまでも京都的にぬらぁと、しれっと混ざり合っている。短いが濃密な世界に放り込まれる。
2024/06/20
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