日本文学100年の名作 第1巻 1914-1923 夢見る部屋 (新潮文庫)
日本文学100年の名作 第1巻 1914-1923 夢見る部屋 (新潮文庫) / 感想・レビュー
佐々陽太朗(K.Tsubota)
谷崎潤一郎『小さな王国』、内田百閒『件』、稲垣足穂『黄漠奇聞』、江戸川乱歩『二銭銅貨』はすばらしい。100年の名作に選ぶことに異議なし。逆に荒畑寒村『父親』、宮地嘉六『ある職工の手記』、宇野浩二『夢見る部屋』には異議あり。といって、私に小説の良さを理解する能力がないだけなのかも知れないが。まあ、私の好みの問題ですから。
2015/09/13
KAZOO
新潮文庫が創刊されて100年間の間に出された短篇をアンソロジー仕立てで何巻になるのかわかりませんが出版され始めました。この巻には11の作品が収められています。谷崎の「小さな王国」、内田の「件」、江戸川の「二銭銅貨」は何回か読んでいましたが、荒畑寒村や長谷川如是閑がこのような作品を書いているとは思いませんでした。稲垣足穂がめっけものでした。
2015/01/10
HANA
100年の名作を10冊に渡って編集するといった壮大な試みのアンソロジー。一冊目は1914年から1923年まで。集められているのは名作だけあって再読から何度も読み返した作品が多く含まれているが、それでも読むに耐えうるのが名作の名作たる由縁か。「二銭銅貨」は読む度に新しい発見を覚えるし、百鬼園先生は文章の妙にひたすら酔える。初読なのは荒畑寒村、宮地嘉六、長谷川如是閑、宇野浩二。長谷川如是閑以外は大正期知識人特有の内面の神経質な寒々しさが現れた作品ばかりのように感じた。こういうのも嫌いじゃないんですけどね。
2014/11/08
メタボン
☆☆☆☆ 100年間の中短編小説を出版社の枠を超えて精選するコンセプトがすごい。良くやった新潮文庫。少年による独裁政治に教師が屈服する谷崎潤一郎の「小さな王国」は出色の短編。他に良かったのは、冗長的だが映画を介するアイデアが良い佐藤春夫の「指紋」、謎の赤帽が出没するのが不気味な芥川龍之介の「妙な話」、江戸弁が小気味よい長谷川如是閑の「象やの粂さん」、理想の部屋での引きこもりと言っても良い宇野浩二の「夢見る部屋」。宇野浩二のひねくれたような独特の文体との出会いが良かった。他既読の「件」「二銭銅貨」など。
2017/09/20
みつ
鷗外『寒山拾得』、百閒『件』、乱歩『二銭銅貨』のみ既読。同じ大正期の短篇を収録した岩波文庫版と比べ、こちらは数段面白かった。宇野浩二の『夢見る部屋』は岩波文庫の『屋根裏の法学士』にも似た、部屋に篭りきりの男の話。部屋への偏愛ぶりは本作の方が上。作者の文体は冗長の極みだが、内容に合致したこれもひとつの芸。『寒山拾得』は、「縁起」での子煩悩らしい作者のオチが微笑ましい。『件』の説明を省いたがゆえのじわじわとくる恐怖は、百閒の別の顔を示す。谷崎の『小さな王国』は、彼独特の嗜虐趣味が意外な世界で現れる。➡️
2023/12/16
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