日本文学100年の名作 第7巻 1974-1983 公然の秘密 (新潮文庫)
日本文学100年の名作 第7巻 1974-1983 公然の秘密 (新潮文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
74年から83年の日本の高度成長期に発表された17の短篇を収めています。このなかで読んでいたのは阿刀田さんの作品だけで他はあまり読んでいませんでした。今ほど読書の時間がなく仕事で残業などがあったせいでしょうか。作家も作品もバラエティに富んでおり、日本社会が活性化しているというのがあらわれている気がします。筒井さんや田中さん、井上さんの作品が結構楽しめました。
2015/03/12
メタボン
☆☆☆★文句なく面白い筒井康隆・五郎八航空、武士道の苛烈さ柴田錬三郎・長崎奉行始末、尽くし切った俳優千寿の面影を孫に見るお勢がいたたまれない円地文子・花の下もと、入院患者に小鳥の囀りを聞かす三浦哲郎・おおるり、およしとできた藤沢周平・小さな橋で、架空の理想的な料亭が実在に神吉拓郎・二ノ橋柳亭、あまのじゃく男の顛末についての語りがうまい井上ひさし・唐来参和、在日の義母の人生を辿る李恢成・哭、安心して死ねと夫を勇気づける色川武大・善人ハム、共に夫婦の微妙な心情の差を描く遠藤周作・夫婦の一日、黒井千次・石の話。
2019/05/23
みつ
この巻には既読作なし。自分の高校生時代以降の10年間を扱っているのに意外。当時は海外ミステリの他ヘッセ、マンやトルストイ、日本の作家なら夏目漱石あたりが中心で、同時代のしかも短編には眼が向いていなかったということか。「100年の名作」というには軽めの作品が目立つのも気のせいか。筒井康隆『五郎八航空』は、著者らしい引きつった笑いがとまらない。安部公房の表題作は、ある動物が崩壊していく様を超現実的に描く。藤沢周平『小さな橋で』は、家族を失っていく少年の悲しみがいじらしい。富岡多恵子『動物の葬禮』は、母娘の➡️
2024/02/25
kasim
都会の溝の泥中からカサカサの飢えた仔象が上がってくる。その存在は公然の秘密、しかし今や明るみに出て食べ物をねだる健気な仔象を人々は哀れみつつも許せない。掌編だが破壊力抜群の安部公房の表題作。「弱者への愛には、いつだって殺意がこめられている」。よく理解できていないけどこの切実さ、不穏な感じはすごい。神吉卓郎「二ノ橋 柳亭」は飲食店の意味や空想と現実の力関係を考えさせる。リアリズム系統では淡々と切なくも美しい三浦哲郎「おおるり」が好き。それでも日々は続く。
2018/12/13
ぐうぐう
1974年から1983年までに発表された短編を収録した第7巻。このアンソロジーがユニークなのは、日本文学100年の名作の中に、例えば筒井康隆のスラップスティックなドタバタ「五郎八航空」や、阿刀田高のブラックミステリ「干魚と漏電」といった作品まで網羅されていることだ。しかし、そんなバラエティなラインナップの中にあってなお、安部公房の「公然の秘密」の異質さ、異様さは、飛び抜けている。いやはや、すごい!
2015/03/25
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