日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003 アイロンのある風景 (新潮文庫)
日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003 アイロンのある風景 (新潮文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
1994年から2003年にかけて新潮文庫に発表された作品16編です。現在活躍中の旬の作家さんが書かれています。結構読んでいるのが多いと思いきや、浅田次郎さんと堀江敏幸さんのだけでした。辻原さんの作品と吉村さんの三陸の田野畑村の医者の話が印象に残りました。
2015/05/13
みつ
「世紀を跨ぐ十年を彩る」とは裏表紙の言葉。これとは裏腹に身辺の小さな世界を淡々と描いたものが強い印象を残す。村上春樹の表題作は、専ら海岸に打ち上げられた流木を使った焚き火の前で語られる会話。阪神・淡路大震災の記憶が影を落とす。吉本ばなな『田所さん』は、あたかも会社の中に存在する座敷わらし(実際はオジサンであるが)を描いたような作。こういう人を雇っている会社は多分幸福なのだろう。江國香織『清水夫妻』は蕎麦屋で知り合った、見ず知らずの人の葬式への出席を欠かさない夫婦の話。人生の断面の捉え方がユーモラスで➡️
2024/03/04
メタボン
☆☆☆☆☆何気ない一言が相手を傷つけていたと30年後に知る「辻原登・塩山再訪」無医村に着任した医師夫婦と村人の交流「吉村昭・梅の蕾」会ったことのない偽装結婚の中国人の妻の思いが沁みる「浅田次郎・ラブレター」最後の一行がサイコで怖い「林真理子・年賀状」老婆の当り屋の伝説がある島「村田喜代子・望潮」いじめを受ける自分をセッちゃんという架空の転校生に擬える「重松清・セッちゃん」(タイトルは「流し雛」でも良いと思う)何でもない焚火に死を見つめる「村上春樹・アイロンのある風景」いやしの存在「吉本ばなな・田所さん」。
2019/08/22
A.T
辻原登「塩山再訪」。思いついて訪れたふるさとで出会った人との短い会話が、忘れ去られた記憶を呼び戻し… 甘い思い出とは違った現実を知るコワさ。懐かしいというのは、勝手な思い込みの記憶再編のたまものなのか。ああ、こわい。重松清「セッちゃん」。嫌いという感情が抑えようもなくイジメに繋がってしまう。この小説では子どもが親へSOSを伝えることができたからよかったものの…。この頃のからイジメが社会問題に挙げられるようになったのか。苦手な村上春樹は、やっぱりダメでした。もう読むことはないかな。
2021/03/21
辛口カレーうどん
村上春樹氏『アイロンのある風景』だけ既読。10巻に比べて、暗いトーンの話が多かった。全体に現実は厳しく、ままならない事が多いというのを感じさせる。吉村昭氏『梅の蕾』無医村にやってきた都会の医者家族と村民の触れ合いという、王道な人情ものだが短い中で、そつなく描かれていた。江國香織さんはやはり好きだ。ふわふわした雰囲気の中に潜む哀しさ。なぜ村上氏のこの短編が選ばれたか、読み始めるまで疑問だったが、焚火を囲むものを包み込む、寂しいような、厳粛で仄暗い雰囲気が、他の作品同士統一感を持たせていたように思う。
2015/07/10
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