東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫)
東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫) / 感想・レビュー
kaizen@名古屋de朝活読書会
オカンとボクの話で、時々オトンが出てくる。題のままのずばりの話。親子ではあるが、家族ではないという。悲しめの話を、明るく前向きに、ときどき暗く。「東京で、一緒に住もうか?」。文学というよりは日記という感じ。リリーフランキーを知らない人がリリーフランキーに興味を持つきっかけになるかも。東京の名所がスカイタワーになってしまい、この話も古典に分類されていく。
2013/06/16
hiro
初リリー・フランキー作品。先日母を亡くした。一人で通夜番をすることになり、積読本の中からこの本を持っていくことにした。福岡で勤務したことがあり九州弁にはアレルギーもなく、読み始めてからすぐに、リリーさんとオカンの実体験のもとにしたこの小説に引き込まれた。そして偶然にも、うちの母もリリーさんのオカンと同じスキルス性胃癌だったこともあり、母を亡くしたときに読むのはピッタリの小説だったと思った。しかし、読み終えて、息子と母親の関係を気づかせてくれる本だとわかり、もう少し早くこの本を読んでいればと悔やんだ。
2012/09/22
あつひめ
2006年本屋大賞受賞作、日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作でもある。記憶の靄を払うように静かに静かに語られるような文章に自分の親へ対する感情、自分の幼かった頃の景色を重ねてしまう。リリーさんとは3つ違い。丙午の私。育った環境も全く違うのにおかしな話だけれど。放任主義のようでいて抑えるところはしっかり押さえている子育て。何でも型にはめたがる現代とは全く違う環境はまるで動物園のようだったかも。このオカンだから、オトンがオトンとして存在していたんだと思うと母も女も強しと思った。親との関係は永遠の課題だ。
2013/03/19
扉のこちら側
2016年340冊め。前半は方言になじみがないためか入り込めなかったが、中盤以降の展開に引き込まれていった。多くの人がいつかは乗り越えなければいけない親の死という試練。冒頭にもあったが、「ど真ん中に突き刺さっている」象徴の東京タワーと、心の奥底で揺るぎない支えになっている親という存在。夫婦や家族は、当事者にしかわからない葛藤もあるし、家族だからといって心通わせなければいけないものでもないとは思っている。しかしこうして物語としてうまい着地を見せられると、いつか自分もと思わされてしまうものである。
2016/05/19
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
第3回本屋大賞受賞作品。リリーさんの一番大切な人。彼のために自分の人生を生きた人―。四歳のときにオトンと別居、筑豊の小さな炭鉱町で、一緒に暮らした。彼は上京し、東京で暮らす。還暦を過ぎた母は、ひとりガンと闘う。大切な人との記憶、喪失の悲しみ。正直言って、文章としてはこれより上手い作家はいくらでもいると思う。でも、リリーさんのオカンを思う気持ちが良く現れた、いい作品だと思いました。★★★+
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