六〇〇〇度の愛 (新潮文庫 か 53-1)
六〇〇〇度の愛 (新潮文庫 か 53-1) / 感想・レビュー
sweetsnow
辱めを受けて、笑って赦す人がいれば、憤って報復する人がいる。それと同じように、耐え難い絶望を孕みながら、死ぬ人間がいれば、生きる人間がいる。ひとはみな、独り独りで、誰とも同一化はできない。宿命的な孤独。それはとても寂しいことかもしれないが、そのようにして、自己を捉え、他者と触れ合うと、絶望を盲信し肥大化させていたことに思い当たる。ありきたりでちっぽけな煉獄。でも、いつかの自分にとって大事だったのだ。そう、美しい苦悩も虚ろな感動もやがて風化してしまう。喜びも哀しみも、すべては此処にあり、なにも此処にはない。
2010/12/10
tomo*tin
種類の違う器がある。深さも大きさも緩やかに描かれた弧の角度も似てはいるが、どんなに似ていようとも同一では無い。それは重ねてみれば分かる。心を砕き苦心し何かに気づかぬふりをして重ねたところで、決してぴったりと重なることは無い。求めれば求めるほど「違う」という「罪」を刻まねばならない。個体の持つ外皮の存在感。混ざり合い一つになることでしか救済は有り得ないという傲慢。膨張する孤独。隣で眠る絶望。追い求めた他者という名の天使。割れることよりも溶かされることを願った女に巣食う、六千度の愛。
2009/09/01
seraphim
第18回(2005年) 三島由紀夫賞受賞作。今年の芥川賞を受賞した鹿島田真希さんの作品を読んでみようと、手にとった。鹿島田さん初読。私には、とにかく難解なお話だった。主人公の平凡な主婦が、ある日優しい夫と子供を残し、1人長崎へ向かう。かつて6000度の雲に覆われた長崎。そこで彼女は、1人の美しい青年と出会う。自殺した兄に対する想いを引きずる彼女は、青年との情交にふける。(続く)
2012/08/02
巨峰
会話と独白が交じり合い混沌とした個性的な独特の文章。だけど、そんなに読みにくくない。6000度の高熱に焼けた町、長崎で、主人公の女は、若い異国の顔をした男性と溶け合うことができるのだろうか。溶け合いたいとも思ってもいないのに。
2009/09/03
つゆき
初めて読む作家さんです。読みにくいと言うか、波に乗れなかった。感情の揺らぎ、孤独との対峙による意識の変化に翻弄され、読んでいて心が落ち着かない。軽く眩暈を起こしそうでした。これは著者からの読み手に対する挑戦状か?とも言うべき難解な一冊。著者が意図したものを理解するには、かなりの読み込みが必要だと思う。俺はもうギブ。
2009/11/10
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