7月24日通り (新潮文庫)
7月24日通り (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
主人公の小百合は、自分が生まれ育ち、今も生活している町をリスボンになぞらえている。タイトルの7月24日通り、コメルシオ広場、フォンテス・ペレイラ・デ・メロ大通りなどという風に。つまり小百合は「夢見る女」なのである。また、本書の背景にはポルトガルの詩人ペソアの面影があり、それが物語の全体に抒情を添える。そこまではいいのだが、人物設定とプロットの根幹は、やや大人向きであるとはいうものの、内実は少女漫画に他ならない。しかも、それはごくありきたりで、もはや古典的とも言えるくらいに陳腐なそれである。残念。
2019/08/17
こーた
故郷の街を異国に見立てて遊んでいたら、退屈な日常が、人生そのものが小説のように輝いて見えて、でもそれがぐわっと劇的に翻って引き戻される。僕はずっと都心の街に暮らしているけれど、その生まれ育った街からは一度も出たことがない。だから奇妙にかんじる。街を出て行ったひとがいて、外からやってきた友人があり、また戻ってきたひとがいる。見慣れた街で異人と再会する。そのどこか捻れたような感覚。吉田さんの小説は、現実よりも現実、というかんじがする。圧倒的な現実が、向こう側から襲いかかってくる。虚構が現実を飲みこんでいく。
2019/11/27
yoshida
生まれ育った街で働く小百合。同窓会に高校時代の憧れの人が東京から帰り参加する。同窓会以降、予想だにしないことが小百合を待つ。憧れは憧れであり現実には叶わないことの方が多い。年齢を重ねれば憧れは甘美な想い出になる。しかし、憧れが現実になる機会が訪れればどうするか。その先には手痛い間違いが待っているかも知れない。それでも機会を活かすことを選びたい。私だったら選ぶ。そうしないと一生の後悔を持つだろう。だからこそ、この作品での小百合の最期の選択を私は支持する。人生は一度きり。傷ついても後悔のない生き方をしたい。
2018/04/22
夢追人009
高校時代の片思いの彼と同窓会での再会から始まる平凡なOL小百合の愛の物語。故郷の港町をリスボンに見立てて日々の憂さを晴らす小百合は地味な自分を自覚していながらも、同じタイプの異性は物足りなく思えて我慢できないのですね。イケメンの弟の恋人めぐみにも私はあなたを認めないと不満を露わにする複雑な性格のヒロインに降って湧いた高校時代一番人気の片思いの相手・聡史との愛のチャンス!同時期に偶然知り合った画家志望の青年にも心が揺れるのだが彼女は現実を取るか理想を追うのか?本書の教訓は失敗を恐れずにトライしよう!ですね。
2020/01/23
ミカママ
タイトルに惹かれて気になってた作品、7月24日を目前にして手に取ることができました。ラスト数ページは祈るような気持ちでドキドキしながら。高校時代からずっと憧れた王子様が、既婚の彼女ににフラれたからって、あっさり小百合になびいちゃうのかな?とそこだけは疑問だったけど、結果オーライだものね。この作品は日本中のちょっと地味で自分に自信のない女の子たちに夢と希望を与えてくれる...はず。各章につけられた性格分析タイトルのうち、私は1と4と9だけ当てはまってました。(笑)
2015/07/17
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