キャンセルされた街の案内 (新潮文庫)
キャンセルされた街の案内 (新潮文庫) / 感想・レビュー
しんごろ
10編からなる短編やショートショート集。物語は、忘れてしまいそうな感じの話ばかり。しかもスッキリしないというか、モヤモヤしたものが多かった。読んだけど、どんな内容だか忘れたわとなりそう。そんな中、表題作だけあって“キャンセルされた街の案内”が良かったかな。“日々の春”、“大阪ほのか”も良かった。人生の中で、そういえばこんなことあったなみたいな物語を多く感じた。
2020/06/05
yoshida
短編10篇による作品集。様々なの心の動き。質感ある不穏さに吉田修一さんの作品だなと実感する。表題作には軍艦島も登場する。まだ軍艦島が注目を集める前か。表題作の指す街は軍艦島。怠惰な兄と育った長崎。大人になっても変わらない怠惰な兄。日常を描きつつ、女性の取るまさかの行動に思わずぞくりとする。「大阪ほのか」での登場人物達が、晩婚であり離婚した私には妙な親近感を覚えた。ラストに歳上の女性との将来が見えるが、リアルな質感が余韻を残す。「乳歯」での同棲する女の連れ子への最後の言葉に、私も思わず同調する。堪能です。
2021/01/24
かみぶくろ
日常の何気ないひとコマや記憶を印象的に描き出す吉田修一さんの短編集、というか断片集。よくそんなに細かい感情の機微や何気ないふるまいを鮮やかに、でもくすぐったく表現できるな、って尊敬しきりだが、厄介なのは、「で、何を言いたいの?」という意味を求める意味のない問いをどうやっても自分が捨てきれないこと。どの話もドラマ性は希薄。だが胸の内のどこかで心地よく感じる何かがある。だがそれだと心的には良くても脳的には良くないので、誰かのキレキレの解説を読みたいものだ。
2016/10/23
じいじ
何気なく過ぎていく日常の一瞬を切り取った短篇集。とても心地いい味わいです。吉田さんの軽妙な筆力だからこそ、なせる業なのだろうと思う。10篇の中では【零下五度】が強く印象に残り、読了後もう一度読み返した。主人公の女性が、真冬のソウルを一人旅する話。とにかく冬のソウルは、とてつもなく寒い。ぽかぽかと暖かいオンドル(床暖房)の部屋から出たくなくなります。韓国の首都ソウルは20年間に、公私ともども30数回行き来した街なので、懐かしい想い出がたくさん詰まっています…。この季節、芯から温まる「参鶏湯」が旨いですよ。
2021/02/17
むらKみ
日常にある話が、短編でちりばめられてる様な感じですね。 全てが「あともう一歩踏み出せば」ってそんな感じの結末。モヤモヤ感もありましたが、確かにと思う事も多くそんな事の積み重ねが、人生を決めていくんだろうなと。「結」は自分自身で考えてって言われているようでした。
2014/04/10
感想・レビューをもっと見る