臓器農場 (新潮文庫)
臓器農場 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ちょこまーぶる
読後は「う~ん!!」と唸ってしまった一冊でした。悪い意味ではなく、医療現場で働いている自分にとっては、問題作を読んでしまった衝撃から飛び出した唸りでした。移植ビジネスとして無脳症児の臓器を臓器移植を必要としている病児に移植するという医療の闇の世界の告発と殺人という内容なんですが、ビジネスを抜きにして生命倫理と医療倫理を考えさせられますね。そして、巧妙にビジネスとして成立してしまう恐ろしさも味わう事ができました。で、読後は全否定できない自分も感じました。移植を待っている病児の親御さんの気持ちを思うと・・・。
2017/11/25
chiru
『閉鎖病棟』で好きになった帚木さんの本2冊目。 臓器移植によって救われる命と、提供された無脳症児の命。 それをつなぐ医療の光と闇がテーマ。 生命維持装置を持たない無脳症児は『人間』といえるのか。 二人死なせるより、一人を犠牲にしてもう一人を救うのは倫理に反するのか。『あなたはどう思う?』と深く問いかけてくる小説。 無脳症児の母、ドナーの提供を待つ子供の母、双方の気持ちを想像して胸をぎゅっと締め付けられました。 芯となるテーマが重いだけに、サスペンス要素とは少し距離があったかも。 ★4
2018/10/22
ミカママ
ふー、駆け込み登録。2014年ラストを飾る、良書でした。ところどころ昭和の古臭さは鼻につきましたが、文庫610ページを一気読みさせられたのは、ひとえに著者の力量でしょう。的場医師と規子の恋愛を絡めたのは、帚木先生のファンサービスか?先生には恋愛小説は似合わないのに(>_<) 病院での黒い疑惑を追い詰める、規子はじめ3人が追われるシーンは息を止めて読みました。「あぁもうそんな、無茶しないで」って母の気持ちで。医療ミステリーでありサスペンスであり。さすが現役の医師作家。これからも追っていきます。
2014/12/31
アッシュ姉
帚木さん12冊目。無脳症児を利用した臓器移植の是非を問う、医療サスペンス。無脳症児は人間的存在ではなく生きていないという解釈で、その臓器を移植を必要とする新生児を救うために利用する。それだけでも倫理的に難しい問題を抱えているうえに、多額の金銭が絡んだり、意図的な操作があったとすれば空恐ろしい。臓器移植はドナーとレシピエントの双方にとって福音という見解には共感するところもあるが、生死の定義や命の重さについて深く考えさせられた。医療の進歩が必ずしも人を幸せにするとは限らないのかもしれない。
2016/07/19
aqua_33
無脳症児は生まれてきたのに、生命活動をしているのに脳がないために「生きている」とは言えない存在。そんな無脳症児の臓器を移植に使っている。字面だけだとショッキングな感じだけど、ドナーが絶対的に不足している現状で、それはそれでアリなのではと思う。ただそこに金銭欲や名誉欲が絡むと一気に非人道的なものに成り下がってしまうのでは…。なかなか読み応えはありましたが、話も比較的スッキリしましたが、私の中のだけで倫理的感情の葛藤がモヤモヤ残りました。《2018年80冊目》
2018/04/21
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