閉鎖病棟 (新潮文庫)
閉鎖病棟 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルは『閉鎖病棟』だが、ここで描かれる精神科の病院は、一部に鉄格子こそ入ってはいるものの、限りなく開放病棟に近いものであり、医師、看護師ともに理想的といってもよいものである。では、何故『閉鎖病棟』なのかといえば、「ここは解放病棟であっても、その実、社会からは拒絶された閉鎖病棟なのだ」ということであり、病院を取り巻く社会こそが病院を隔離し、閉鎖するものとの認識なのであり、告発である。解説者も指摘しているのは残念だが、「患者はもう、どんな人間にもなれない」のが現状なのだ。精神疾患を抱えた人たちを主人公に⇒
2016/05/05
ehirano1
開幕早々ドーンと叩き落とされ、『この本は一体何を語ろうとしているのか?』と興味よりも残酷すぎる開幕に読むのを止めようかと思いましたが、淡々と優しくも時折の残酷なまでの激しさを交えながら話が進みます。最後の方は自然と落涙していました(電車の中でなくてよかった、汗)。読んで良かったと思える心に響く素晴らしい本だと思いました。
2019/05/11
鉄之助
20年、30年…と隔離され閉鎖病棟に暮らす、様々な過去を持つ人々。しかし、決して陰湿、陰惨でない。むしろ、前向きに、「確かに生きている」感が良かった。「独房にいた15年間、来る日も来る日も字を書くしかなかった。そのうち字も覚えた」。墨汁を使うのでなく、30分から1時間かけて墨をするのが良い、のだという。「頭のなかのもやもやが消え、別人になる」。私も無性に、やってみたくなった。 → 続く
2019/02/09
ちょこまーぶる
辛い読書になるかなと思ったが、最後には人の温かさを感じると同時に勇気も貰える一冊でした。精神科病棟に入院している患者さんの入院患者としての人生の日々を書き記されています。やはり、彼らの人生は偏見に満ちた人生を歩んでいるという事が胸が痛いほど感じましたね。発症時は、周りの人々を巻き込んで多大なストレスを与えているけど、しっかりと治療に向き合うことでコントロール可能となり、自分の意志で決めれる生き方の選択権までは放棄させれないことを忘れてはいけないと病院に勤めている者として改めて思いましたね。おススメ本です。
2016/03/10
サム・ミイラ
私の義兄は小児麻痺による身障者であった。大学に進み兄の家に居候した私は兄の学級の友人達と親しく触れ合ううち、身体に障害のある方と健常者の問題を知り理解したつもりでいた。差別を憎んだ。しかし精神に障害を持つ方の事を考えた事は一度もなかった。あまりにも私は無知だった。この本は人間としてとても大切な事を気づかせてくれる。生きる事は辛く悲しい事のほうが多い。しかしだからこそ喜びもあるのだと、希望は貴方のそばにいつもあるのだと著者は語りかける。温かくそして冷徹に。多くの人に読んでほしい良書である。
2016/08/25
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