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風花病棟 (新潮文庫)

風花病棟 (新潮文庫)

風花病棟 (新潮文庫)

作家
帚木蓬生
出版社
新潮社
発売日
2011-10-28
ISBN
9784101288215
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風花病棟 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

10篇の短篇を収録。専門領域はそれぞれに異なるが、いずれも主人公は医師。現役の精神科医にして作家の2足の草鞋を履く帚木蓬生ならではの作品群だ。けっして、いわゆる名医の物語ではない。むしろ、彼らが等身大で自らの医師としての欠点を自覚している点が、職業人として、そして人間として生きていることのリアリティとして迫ってくる。これらの作品を読んでいると医師というのは、ほんとうに人生を賭けるに値する職業なのだとひしひしと、そしてしみじみとそう思う。同時に小説としても、いい話だったなあと思うのである。

2019/12/12

yoshida

医師を主人公とした短編集。10編収録。超人的な医師が登場する訳ではない。それぞれの立場で、静かに真摯に医師の仕事に向き合う姿が描かれる。医師ではあるが、人間であり欠点もある。そのありのままの姿がリアリティを生む。そして彼等の姿に職業人としての矜持を見る。気丈な患者の姿や、患者と向き合う医師の姿、それぞれの人生に静かな感動を覚える。精神病棟や軍医の描写は帚木蓬生さんの作品ならではだろう。ベトナムの独立までの労苦、そして独立後も爪痕を残す枯葉剤の恐ろしさを知る。派手さはないが、多くの方に読んで欲しい良作です。

2019/12/29

ちゃちゃ

名医とはいったいどのような人を指すのだろう。本作に登場するのは、地道に患者に寄り添う名も無い10人の良医。どれほど医療技術が進んでも、医療の本質は人と人の繋がりにあるという作者の声が行間に溢れる。患者の声に耳を傾け、患者の訴えに学ぶ姿勢。帚木作品の特質でもある静かで抑制された筆致、人間を見る慈愛に満ちた視線が、本作にも存分に伺える。最終話の『終診』で示された、老医師が守ってきた信念「逃げんで、踏みとどまり、見届ける」。医療の原点とも言うべきこの言葉は、医者とは「人を看る」人のことをいうのだと告げている。

2019/12/03

はたっぴ

昨年読んだ『水神』に感動し著者の作品を再読した。受験真っ最中の甥っ子は医者志望。小さい頃に病弱で、何度も近所の病院に通っているうちに先生に懐いて可愛がってもらったようだ。〝話をすれば面白く、具合が悪い時は体を治してくれる凄い先生〟幼少時の経験が胸に刻まれ憧れを持ったそうだ。この作品でも同じような話があり共感を覚えた。ここでは優秀な医師というよりも心ある先生が多数登場する。医師も私達と同じ人間であり、医療活動をしながら自分の人生を実直に生きているのだと実感できた。仕事と人生の狭間を温かく描いた作品だと思う。

2017/02/07

のぶ

とても心に響いた作品集だった。10篇の短編が収められているが、10人の医師と患者の物語。登場する医師は真剣に患者と向き合い、治療に全力を尽くしている良医たちばかり。皆、最善を目指しているが、余命の限られている患者もいる。医師という職業を離れて一人の人間として取り組んでいる姿には感動を覚えざるを得ない。病気に対してどんな薬剤より最良の薬は希望だという一言にも納得。戦争を扱った話には心が痛んだ。姉妹策にあたる「閉鎖病棟」も良かったが、短編で描かれる本作も視点が違った良作だった。

2019/07/31

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