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蛍の航跡: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)

蛍の航跡: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)

蛍の航跡: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)

作家
帚木蓬生
出版社
新潮社
発売日
2014-07-28
ISBN
9784101288253
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蛍の航跡: 軍医たちの黙示録 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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yoshida

労作である。15名の軍医のそれぞれの戦地での記録。期間は日中戦争からの大東亜戦争の敗戦まで。解説にもあるが「勝者の傲慢」と言える事例に静かな怒りを感じる。「行軍」での敗戦後の豪軍の実質的な虐殺。「名簿」にある、シベリアでの死亡者の記録を徹底的に破棄しようとしたソ連軍の酷薄。反対に「杏花」での中国人と日本人軍医の交流に人類の可能性をみる。「軍靴」での敗戦間際のフィリピンでの兵站病院の死の彷徨はあまりに酷い。多様な戦地の姿と苦闘する軍医達の記録。このような出来事が繰り返されないよう、我々は胸に刻むべきと思う。

2018/08/03

のぶ

膨大な労作である。15人の軍医が体験した、15の戦場の物語が700ページ超に収められている。どの話にも個性があり、それぞれの読後感があるが、共通しているのは大陸での戦場の凄まじさだった。現地ではマラリアやデング熱、天然痘等あらゆる病気が蔓延し、衛生面で悲惨な状況であったことが伝わって来る。限られた医薬品や医療施設でどれだけの兵隊を救えるのか。文章に強い主張はなくドキュメンタリータッチだったが、全体を通して戦争の愚かさが伝わって来る。本作の前作にあたる「蠅の帝国」もぜひ読んでみたい。

2019/02/16

piro

再読。軍医の視点から大戦を描いた一冊。著者の強い思いが込められた15編、700ページを超える大作です。フィリピンやニューギニアにおける苛烈な逃避行の様子が衝撃的。戦闘負傷だけではなく、マラリアやアメーバ赤痢といった病、そして飢えに苦しみ息絶えていく人々。軍医として治療はおろか、安らかに看取る事すらできず、見捨てるしかない状況が読んでいて辛い。そして終戦後のソ連による掠奪、強制収容には怒りを禁じ得ません。濃密な大作に、色々な思いが交錯する読後感。平和を脅かす出来事が多い今、複雑な思いに襲われました。

2022/08/12

keith

15人の軍医の目から見た第二次世界大戦の真実。兵士たちは戦闘による負傷より、マラリアなどの病気や飢餓で死亡する人の方が多かったとのこと。兵をモノとしか考えない司令部の無謀かつ杜撰な作戦の犠牲となり、異国の土となった兵士たち。医薬品の補給もない中で軍医たちはあまりにも無力でした。戦争は悲劇以外何ももたらしません。折しも水木しげるさんが亡くなられました。歴史の生き証人がまた一人失われてしまいました。

2015/12/01

キューポップ

700頁超の軍医達の短篇集。軍医と雖も砲撃や病にさらされる事には変わりない。「ジャワは天国、ビルマは地獄、生きて帰れぬニューギニア」と、あるが、任地が何処かで天と地の差。運次第というには余りにも戦争は残酷だ。医大卒業までの過程が短縮され、軍で短期教育を受けた後すぐに前線に飛ばされる。戦争さえ起こらなければ医師としての人生を全う出来たものを。 /本著は坦々とし過ぎていた。途中で一旦止めようと思った位だ。軍医達の物語『蠅の帝国』があるみたいだが、読むのはどうしたものかと思う。

2022/04/15

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