銃 (新潮文庫 な 56-1)
銃 (新潮文庫 な 56-1) / 感想・レビュー
masa
僕が三番目に寝た女の子は、僕の銃を“あなたのレーゾン・デートゥル”と呼んだ。それは夢中になれる大切なもの、誰かの理解を拒むもの、人とは違う自分らしさの象徴だった。僕に万能感をもたらし、何だってできる気にさせた。ただし、僕には常に俯瞰してシーンの解析を試みる性癖のようなものがあるから、それがブレーキとして作用し、幻想と現象は等しく知識に留まった。それでも果てる行為は翻弄と地続きで、屈服を伴う。撃ったのか撃たされたのか。真剣な虚構に没頭する僕の脳で壁に卵をぶつけるように銃声が警告する。システムに利用されるな!
2019/06/09
itoko♪
中村文則さん初読み。デビュー作だそうですが、独特な世界観に圧倒されてしまった。ある日、ふとしたことから拳銃を拾ってしまった青年が銃を手にしたことで起こる、好奇心や葛藤が伝わってくる。自分が【支配している】と感じていたものに、実は【支配されていた】ことに、主人公は気付いていたのだろうか。
2015/07/02
はらぺこ
読む前はもっと重たい話かと思ったけど、読んでみたら思ったより読みやすかった。
2013/09/16
starbro
中村文則の未読の旧作7連続シリーズ第三弾は「銃」です。処女作で芥川賞受賞はなりませんでしたが、受賞した「土の中の子供」よりも衝撃的で心に突き刺さる作品です。この作品で受賞させるのは危険と審査員が判断したのではないかと思います。ブラックホールのようなマイナスエネルギーが迸る彷徨に撃たれました。
2015/05/14
ケイ
読んでいて苦しくなる感じ。主人公の抱えているものは想像するしかないが、色んな事が理不尽だなと思った。辛い子供時代があっても、素晴らしい人に育ててもらったら、黒ずんだ心も少しずつ澄んでいかないのだろうか。喫茶店での刑事の話が予言のようで、こわかった。ホッとしたのに、結末が追い付いてしまった、主人公は逃げ切れなかった…。
2013/10/02
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