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迷宮 (新潮文庫)

迷宮 (新潮文庫)

迷宮 (新潮文庫)

作家
中村文則
出版社
新潮社
発売日
2015-03-28
ISBN
9784101289557
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迷宮 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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🐾Yoko Omoto🐾

中村作品初読み。心の中の迷宮をあてもなく彷徨い続ける心理状態が剥き出しに綴られた物語。自分が思う“普通の人間”がよくわからなくなるような危うさを感じながら、それでいて目を逸らすことが出来ない魅力がある。迷宮から脱したいのか留まりたいのかわからず、生と死どちらにも傾けない。現実社会に迎合する気になれないのに諦念も抱けず、自身の歪みを他人に投影しながら深みに沈んでゆく主人公。彼は別に狂人ではないし異常者でもないのだが、他人も自分自身も常に客観視し自問自答し続けるその姿は恐いぐらいに真面目でそして歪に見える。→

2015/07/14

優希

狂気と善悪に酔わされてしまいます。全裸で横たわる女、周囲の無数の折り鶴。迷宮入りしていく一家惨殺事件の中、ただ1人生き残った少女が時を経て、それまで静かだった狂気が闇のように広がっていくのが不穏さを感じさせます。短いストーリーでありながら様々なミステリーが含まれているのに引き込まれました。陰鬱さと壊れた精神に飲み込まれていくのが恐ろしいようで快感にも感じる、不思議な感覚になる物語です。

2016/05/29

新地学@児童書病発動中

暗く重たい小説。主人公の青年は、10代の時に父と母、兄を殺された女性と知り合い、逢瀬を重ねていく。自分が心の中に抱えた闇と、その女性の心の闇が重なり合って、さらに深い闇が生まれる。殺人事件の真相は最後まではっきりしない。ミステリ的な要素もあるが、普通のミステリのようなすっきりとした結末を、迎えることはない。主人公がその女性と深い仲になるにつれ、謎が深まってしまう。暗くて救いようのない物語だが、現場に置かれた折鶴のイメージが幻想的で美しく、心に刻まれる。

2017/05/30

オリックスバファローズ

ある種の事件が、人を無性に魅きつけることがある。人間が起こしたとは思えないような、異常性の或る、吐き気をもよおすような凄惨な殺人事件。 衝撃的なその事件について、テレビで毎日報道され、私たちは釘付けになる。「犯人は異常で、人間がしたこととは思えない」等と言いながら・・・ けれどその時、自分の中に、ある種の「振動みたいなもの」を感じたことはないだろうか。 少しでもその「振動みたいなもの」を感じたことがある人なら、考えてほしい。「その振動みたいなもの」の先へ進めるとしたら?あなたにとっての「完璧な殺人」とは?

2019/04/25

ケンイチミズバ

私の中にもRは存在します。そうなればいいのにと悪意のこもった期待をする心の暗い面はRのせい。Rがそそのかしたからだと責任転嫁したり、後悔し懺悔する相手もRです。人間の心理はそんな風にできているのだと思うこともあります。凄惨な殺人事件の唯一の生存者の真の姿がラストに向かい明らかになります。暗い事件に惹かれる危うい内面の男が深く関わることで謎が解き明かされます。それは犯人と似ているから。可哀想な美しい女性が目の前でもがき苦しむ姿に陶酔する危ない作品を最後まで読んでしまいました。表紙にも惹かれました。

2015/12/03

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