日蝕 (新潮文庫 ひ 18-1)
日蝕 (新潮文庫 ひ 18-1) / 感想・レビュー
ミカママ
読みやすいか?と聞かれれば、間違いなく「NO」。読み終えて、その読みにくさを凌ぐ文章の美しさに感嘆。独りよがりになりがちなルビ使い、この作品では絶妙に活かされていて。このデビュー作がどう連なって行くのか、お手並み拝見といきましょう。
2016/11/25
absinthe
何が何だか分からないまま、凄いものを読まされた。中世欧州を舞台に繰り広げられた両性具有者、錬金術師、異端審問、魔女狩りの世界。不作と病魔によって狂気に陥り、誰かを魔女と断罪せずには助からないと信じ込んだ村。男性器の陽と女性器の陰。太陽の陽と月の陰。それぞれの陰と陽、日蝕の瞬間に天と地でそれぞれ結合された。このとき錬金術が達成されたのか?何を暗示して何が描かれたのか、圧倒的な力量を感じたが、意味が多重にこめられすぎてどこまで読み切れたかまるで自信がない。
2021/06/15
ヴェネツィア
1998年下半期芥川賞受賞作。作家の文壇への登場は、実にセンセーショナルなものだった。それは無名の学生からの「新潮」への投稿に端を発した。受けた方も驚いただろう。その結果は、本編が「新潮」8月号の巻頭を飾ったことに明らかだ。さらに同年の芥川賞まで浚っていった。漢字と漢語を縦横無尽に駆使した文体は、新人離れの域を遥かに超えているだろう。ルネサンス期に置かれた物語も重厚そのものだ。表題となった「日蝕」の作中での効果もまた圧倒的だ。しいて難を言うならば、此処に描かれているのはまぎれもなく異端だということだろう。
2013/07/14
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
第120回(1998年)芥川賞受賞作。中世ヨーロッパを舞台に宗教と学問の対立、魔女狩、錬金術、両性具有者(アンドロギユノス)といった、現実社会とはかけ離れた別世界を美しくも難解な筆致で綴る。既読の『マチネの終わりに』とは全く違った文体に、この作家の表現力、文才の深さを感じた。普段立ち入ることのない、このような特異な世界観を提供してくれる作家って、そうそういるものではない。また次が読みたくなる作家さんです。
2021/04/10
遥かなる想い
第120回芥川賞を当時最年少受賞というので、読んでみたが「良さがよくわからなかった」というのが実感である。受賞当時大評判になり、才気を多くの方々が絶賛していたが、残念ながら私にはわからなかった。筆力はあるのかもしれない・・・しかし15世紀の南仏という舞台設定・神学僧という身分のなじみの薄さ、から全く入っていけなかった。
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