葬送 第一部(上) (新潮文庫)
葬送 第一部(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
物語はタイトルに謳われているごとく、ショパンの葬礼に幕を開ける。何故にここから始まるのかは、追々明らかになるものと思われる。まだ全体の1/4が終わったばかりだが、物語世界にはロマン主義の息吹が横溢する。もっとも、作中のドラクロワは自らがロマン主義者として位置付けられることを嫌うのだが。現在のところでは、動のドラクロワと静のショパンといった趣きだ。ただ、この時点でサンドとの蜜月はもはや終わりを告げそうである。物語のうねりの行方は不明であり、どこに向かうのかは分からないが、長編の風格を持って下巻へ。
2016/07/16
のぶ
タイトルからショパンの伝記的な話かという先入観から入ったら外れた。全4冊の1冊目を読む限りだが、冒頭ですでにショパンとサンドの関係が出来上がっていて、病気が進行していた。ショパンの音楽に対しての記載はあまりなく、周辺の作曲家のエピソードの方が面白い。もう一人の主人公が画家ドラクロワ。この本ではこちらの話の方がむしろ多い気がした。前から気になっていた作品だが、平野啓一郎という事でちょっと難しい気がして敬遠していたが、とても読みやすく物語に引き込まれたところで、第一部の下巻へ入ります。
2016/06/13
優希
ショパンの半生の物語が紡がれます。流麗なピアノの音が背景に流れているようでした。孤高で繊細な精神がそのような調べをこれからどう流していくか気になります。
2022/12/14
かみぶくろ
3.6/5.0 この作者って19世紀フランス生まれの人だっけ?と思うくらい、当時のパリ芸術界隈が詳細かつリアルに描き出されている(ように思える)。作者の並外れた探究心と想像力に舌を巻くばかり。ただ内容はひたすらショパンとドラクロワの日常生活と思考と芸術論を蘊蓄混じりに書き連ねているので、物語的な展開は第一部上巻では乏しい。
2024/08/18
ころこ
これから始まることの戸惑いよりも、既に起こって取り返しのつかないことの悔悟と追憶が多いのは、02年当時の日本の状況と重ねているのだろうが、読者は若かった作者にそんなことを期待していない。その時代で先端的に表現されたものが後年になって伝統の文脈に連なることを、作者は書く時点で文学の伝統に置きにいってしまっている。これが作者の初期作品が読者とすれ違っている理由だ。この勘違いは現在でも程度の差はあれ続いているようにみえる。読書人は真面目な人が多いので、ショパンとドラクロワというと意味もなく有難がってしまうのだ。
2024/11/02
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